11月に行われる米大統領選の共和党候補に正式に指名された不動産王のドナルド・トランプ氏を巡り、再びアーティストたちから怒りの抗議が相次いでいます。トランプ氏は選挙キャンペーン中、ローリング・ストーンズやアデル、エアロスミス、ニール・ヤングら人気アーティストたちの楽曲を繰り返し無断で使用し、集会で自分たちの曲を使用しないよう求められる騒動に発展していましたが、オハイオ州で先週行われた党大会でも同様の行為が繰り返されています。

 党大会初日にトランプ氏がステージに登場する際に使用したのが、クイーンの代表曲「伝説のチャンピオン」。これに対し、クイーンは「我々の意思に背いて無断で使用された」とツイッターに書き込み、政治の場で道具として使用することは許可しないと抗議。使用停止を求めています。トランプ氏陣営が「伝説のチャンピオン」を選挙戦で使用したのはこれが2度目で、クイーン側はファンから抗議や批判が相次いでいるとし、不快感を示しています。

 20日にトランプ氏が開催地のクリーブランド入りした際に使用したのは、イタリアのオペラ歌手故ルチアーノ・パバロッティ氏が歌うジャコモ・プッチーニのアリア「誰も寝てはならぬ」。トランプ氏が搭乗する飛行機をバックに集まった支援者やメディアの前で同氏が歌う曲が使用されたことに対し、「芸術家としてのキャリアを通じて表現した兄弟愛や連帯への価値観は、トランプ氏が打ち出す世界観とは全く相いれない」と遺族は声明を発表。同氏の作品を選挙戦で使わないように求めています。

 また、最終日にトランプ氏の娘で副社長を務めるイヴァンカさんが登壇した際に使用したビートルズの「ヒア・カムズ・ザ・サン」を巡っても、同曲を作曲した故ジョージ・ハリスンの遺産管理団体が、「我々の意志に反する不快な行為」と抗議の声明を発表。希望と再生をテーマに書かれた曲は、移民排除など過激な政策を掲げるトランプ氏の選挙戦にはふさわしくないとしています。

 トランプ氏を巡っては音楽界のみならず、ジョージ・クルーニー、ジョニー・デップ、ハリソン・フォードら大勢のハリウッドスターからも批判の声が相次いでおり、11月の本選を前にハリウッドでも反トランプ派の言動に注目が集まっています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)