ハリウッドではスーパーマンやスパイダーマン、アイアンマンなどスーパーヒーローが活躍するアメコミ映画が全盛期ですが、子供たちには「アベンジャーズ」よりも実は日本の特撮「スーパー戦隊」シリーズを英語版にした「パワーレンジャー」の方が人気があります。1993年に「恐竜戦隊ジュウレンジャー」を米国向けにアレンジした「マイティ・モーフィン・パワーレンジャー」シーズン1が放送を開始して以来、子供向け番組として絶大な人気を誇るアメリカでもっとも成功した日本の作品の一つ。米国では90年代以降に生まれた子供たちの多くが、パワーレンジャーと共に育ってきたと言っても過言ではありません。1995年と97年に劇場版も公開されており、フィギュアなど関連グッズも人気があります。そんな「パワーレンジャー」がこのほど、総製作費120億円をかけてヒーロー映画としてスクリーンに登場し、15日から日本でも公開が始まりました。

 「パワーレンジャー」シリーズは、原則的に前年に日本で放送された「スーパー戦隊シリーズ」をベースにドラマ部分は現地の俳優を使って撮影し、スーツを着用したアクションシーンは日本版を流用する形で放送がスタート。その後は、スタントマンが活躍するアクションシーンの一部もロサンゼルスで撮影されるようになり、現在はほぼ全てがニュージーランドで撮影されています。平凡な5人の高校生がパワーレンジャーとして活躍する本シリーズはこれまで26作が製作されていますが、このほど公開された映画版は「マイティ・モーフィン・パワーレンジャー」に始まる人気シリーズのリブート作。レッド、ピンク、ブルー、イエロー、ブラックと色分けされた5人の戦士たちが力を合わせて敵を倒す基本ストーリーはスーパー戦隊と同じで、見せ場となる変身や戦闘シーンなど見どころもたっぷり。劇場版はアクションシーンのみならずドラマ部分も綿密に描かれており、幼い子供だけでなく、大人も一緒に楽しめると評判で、オリジナル作品へのリスペクトにあふれる仕上がりになっています。

 「ドクター・ストレンジ」や「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」、「スーパーマン ホームカミング」、「ワンダーウーマン」など、日本ではこの夏アメコミヒーローが活躍するスーパーヒーロー映画が目白押しですが、「パワーレンジャーズ」もクオリティーの高さでは負けてはいません。単なる子供向け戦闘映画とは一線を画し、全米で大ヒットした日本の戦隊シリーズがパワーアップして凱旋公開される本作は、この夏日本でも大暴れしそうです。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)