去就が注目されていたダニエル・クレイグが、2019年公開の人気スパイ映画「007」シリーズ最新作「ボンド25(原題)」でジェームズ・ボンド役に復帰することを明言し、ファンを安どさせました。クレイグは「007 カジノ・ロワイヤル」(2006年)で6代目ボンドに抜てきされ、シリーズ初となる金髪ボンドが誕生。その後は「007 慰めの報酬」(08年)「007 スカイフォール」(12年)「007 スペクター」(15年)と4作品に出演するも、「スペクター」の公開直後に、「再びジェームズ・ボンドを演じるくらいなら手首を切った方がマシ」などと発言し、降板がうわさされていました。ハリウッドでは次期ボンド役を巡って複数の俳優の名前が取りざたされるなど復帰は絶望的と思われていましたが、製作陣は水面下で粘り強く交渉を続けていたようです。

 1962年に「ドクター・ノオ」が公開されて以来、50年以上続いてきた世界的人気スパイ映画「007」は、次回作で記念すべきシリーズ25作目を迎えます。見事なボンド像を作り上げた初代のショーン・コネリーから、粗削りで野性的な魅力あふれるクレイグまで、タフさとエレガンスを兼ね備えた成熟した男の色気が魅力のジェームズ・ボンドを演じてきた俳優たちを紹介します。

●ショーン・コネリー

 1作目から5作目、そして7作目の6作品に出演したコネリーは、今でも「ボンドといえばコネリー」といわれるほどファンが多いことで知られています。コネリーの起用を巡っては当初、原作者のイアン・フレミング氏が、「コネリーは粗野で、原作の紳士的だが冷たい雰囲気のイメージにはそぐわない」と反対していたといわれています。しかし、スマートでありながらも野性味あふれるボンド像は、瞬く間に人々の心をつかみました。セクシーでダンディーなボンド像は、まさにコネリーから生まれたのです。日本を舞台にした「007は二度死ぬ」(67年)は、今も多くのファンの心に残っていることと思います。

●ジョージ・レーゼンビー

 2代目となったレーゼンビーは、「女王陛下の007」(69年)の1作のみ出演。コネリーが降板表明後に後継者に抜てきされるも、モデル出身で演技経験が乏しかったことで、コネリーのボンド像と比較されてプレッシャーに負けたのではないかといわれています。1作限りで降板した直後の7作目「ダイヤモンドは永遠に」(71年)には、コネリーが復帰するというドタバタ劇となりました。1作のみにしか出演していないにも関わらず、今でもファンからは強く支持されるボンドです。

●ロジャー・ムーア

 コネリーから再びボンドを引き継いだ3代目のムーアは、甘いマスクとユーモアあふれるキャラクターで低迷していたシリーズを復活させた立役者といわれています。「死ぬのは奴らだ」(73年)から歴代最多となる7作品に出演し、ムーア自身も国際的な大スターとなりました。人間味あふれるボンド像は、歴代の中でも一番人気といっても良いでしょう。

●ティモシー・ダルトン

 「リビング・デイライツ」(87年)「消されたライセンス」(89年)の2作品に出演。故ダイアナ妃が「最もリアルなジェームズ・ボンド」と評したことで知られています。コネリーほどの華やかさやスター性はなかったものの、アクションのキレは抜群で、どこか陰のあるクールなキャラクターは原作により近い存在だったといわれています。

●ピアース・ブロスナン

 冷戦が終結してスパイ映画の在り方も変化が求められた90年代に4代目となったブロスナンは、シリーズ17作目となる「ゴールデンアイ」(95年)から登場。英国紳士そのもののイメージ、誰もが認める抜群のルックスとスタイルで、「歴代で最もかっこいいボンド」といわれました。

●ダニエル・クレイグ

 当時無名の俳優で、しかもシリーズ初となる金髪、青色の目のクレイグの起用は大きな衝撃でした。歴代ボンドとのイメージからかけ離れており、原作の設定とは違うというバッシングもありましたが、若くて粗削りなボンドを見事に演じ、アクションシーンでもファンを魅了。結果として「カジノ・ロワイヤル」はシリーズ最高の興行収入を樹立しました。25作目の仮題は「シャッターハンド」になるとも伝えられており、2019年11月8日全米公開予定。これが最後となるであろう新作で、どんなボンド像を見せてくれるのか、今から楽しみです。