トランプ政権が誕生して20日で1年を迎えました。「アメリカ・ファースト」を掲げて就任したトランプ米大統領は、移民排除政策や様々な暴言、ロシア疑惑などで就任後も多くの国民から批判が集まっていますが、早くも3年後に向けて今一人の黒人女性が次期大統領候補として注目されています。その人物とは、今月7日にロサンゼルスで行われたゴールデン・グローブ賞授賞式で功労賞「セシル・B・デミル賞」を受賞し、感動的なスピーチが話題になったテレビ界の女王オプラ・ウィンフリーです。日本ではほとんど無名ですが、アメリカでは「もっとも影響力のある女性」といわれるウィンフリーとは、一体どのような人物なのでしょう。

 高視聴率を稼ぐトーク番組「オプラ・ウィンフリー・ショー」の司会者として誰もがその名を知る有名人で、雑誌「O ザ・オプラ・マガジン」を発行し、自身のテレビチャンネル「オプラ・ウィンフリー・ネットワーク」も持ち、番組や雑誌で紹介した本や物はベストセラーになるほど大きな影響力を持っています。また、女優としても多くのテレビドラマや映画にも出演しており、「カラーパープル」(1985年)ではアカデミー賞助演女優賞にもノミネートされるなど、多方面でマルチな活躍をしています。黒人女性初のビリオネアであり、総資産は30億ドル、日本円にすると約3300億円ともいわれ、ハリウッドの一流スターたちからも一目置かれる存在です。

 そんなウィンフリーですが、実は貧しい家庭で生まれ育っています。10代の母親から生まれたウィンフリーは、幼い頃は祖母の元で育てられたといわれています。一度は母親と暮らすようになったものの再び9歳の時に親戚の家に預けられることとなり、そこで親族から性的暴行を受けて14歳で妊娠。出産するも、子供はすぐに死亡してしまいます。それでも高校時代は弁論部に所属し、地元テネシー州の黒人向けラジオ局でアルバイトをし、奨学金を得てテネシー州立大学に進学。そこで才能を開花させ、同州ナッシュビルやボルティモアのテレビ局を経て、シカゴでトーク番組のホストに抜てきされるサクセスストーリーを手にします。その時に番組を見たクインシー・ジョーンズの目にとまったウィンフリーは、スティーブン・スピルバーグ監督の「カラーパープル」でソフィア役をオファーされて女優デビューを果たします。そして1986年から放送が始まった「オプラ・ウィンフリー・ショー」で一躍国民的なスターとなりました。

 プライベートでは慈善活動に熱心で、アフリカに小学校を設立したり、災害被害者の支援や子供の権利運動など様々な慈善団体に積極的に寄付を行っており、過去には「慈善活動に最も貢献した30人」に名を連ねたこともあるほど。そんなウィンフリーの9分に及んだゴールデン・グローブ賞のスピーチは、セクハラ被害にあった女性や貧困や恵まれない環境にいる人たちに向けた力強いメッセージであり、「まるで大統領選の演説のようだった」と称され、スピーチの後は会場が総立ちとなり、大きな拍手が鳴りやみませんでした。

 その人柄と経歴、影響力の高さから大統領選でトランプ大統領に敗れたヒラリー・クリントンの次に女性大統領になる人物といわれてきたウィンフリーは、この1年で分断したアメリカを立て直すにはほかには適任者がいないとまでいわれるほど世代や人種を超えて多くの国民に支持されているのです。国民から愛される黒人女性初の大統領が誕生する日が来るのか、3年後が楽しみです。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)