「エイベックス・アーティストアカデミー」のモデルクラスでトークレッスン講師を担当しているのですが、モデルを目指しながらもMCの仕事もしたいという子には司会のいろはを伝えています。司会で大事なのは、台本にとらわれないこと! これはしゃべる現場ではどこでも言えることです。

トーク編13「話し言葉と書き言葉」

 【前回までのあらすじ】トークレッスンの項目は<1>発声、<2>滑舌、<3>話の内容、<4>メンタル、<5>コミュニケーションとしています。これまで、話の内容、滑舌、発声についてお伝えしてきましたが、ここでまた少し戻って、話の内容についてです。

東京・新宿で行われたトークショーで司会を担当した五戸です(2017年2月)
東京・新宿で行われたトークショーで司会を担当した五戸です(2017年2月)

「自分の言葉」に変えてって言われても…

 「絶対に台本通り読まなければならない」という場合もありますが、そちらのほうがまれで、司会でもゲストでもほとんどの仕事で「自分の言葉に変えて読んで構わない」と言われます。

 ただ、まったく司会経験のない子の場合、何をどう自分の言葉に置き換えていいのかさっぱりわからない、となってしまいます。たとえば皆さんでも友人の結婚式の司会をすることになったり、何かを代表して挨拶することになったりしたとき、「自分の言葉」と言われても、そもそもそういう立場で普段しゃべっていないから、自分の言葉になりようがない、と困ってしまう方多いと思います。

 ここでポイントになるのが「話し言葉」と「書き言葉」の違いです。

「話し言葉」「書き言葉」使い分ける日本人

 日本語は、しゃべっている言葉と、書いているときの言葉が、往々にして異なります。書きながら、この「往々にして」も話し言葉ではあまり使わないなぁと思っているところです。

 小学生のときに習った作文は「書き言葉」。作文では「夏休みに母とプールに行きました」と書いて、友だちとしゃべるときは「夏休みさ~、お母さんとプール行ったんだけど…」となる。このように日本人は毎日、「話し言葉」と「書き言葉」を自然に使い分けているんです。

 日刊スポーツでは「二死満塁から適時打」と書くものも、実況では「ツーアウト満塁からタイムリー」と言いますよね。

 こんな複雑な言語、なかなかありません。英語でもスラングなど話し言葉でしか使わない単語もありますが、日本語はもっと激しく異なるので、これを意識せず区別して毎日使っている、それだけですごいことのような気がします。日本語が使えるって、誇れることなんじゃないかと!

五戸先生として「エイベックス・アーティストアカデミー」でトークの講義をしていますが、優しく厳しく充実した授業です(2016年7月)
五戸先生として「エイベックス・アーティストアカデミー」でトークの講義をしていますが、優しく厳しく充実した授業です(2016年7月)

「話し言葉」に書き換えるべし

 さて、話を戻します。

 台本や原稿は「書き言葉」で書いてあることがよくあります。これを「話し言葉」に書き換える、それだけで「自分の言葉」に近づけることができます。

 たとえばイベント司会の台本に「本日、当店にて対象商品ご購入のお客様に、特典券を配布しております」とあったとします。この一文を話し言葉ベースに変えてみましょう!

 まず「本日」は書き言葉。話し言葉の「今日」でいいです。(「本日」でも間違ってはいませんが)「当店」は「このお店」でいいですし、「にて」は代表的な書き言葉なので「で」に変えましょう。「ご購入」「配布」のような音読みの熟語は訓読みに変えると話し言葉らしくなります。まとめると…

 「今日は、このお店で対象の商品をお求め頂いた方に、特典券をお配りしております」

 すっきりした感じがしませんか?

 司会に限らず、こうやって元の台本を話し言葉に書き換えるだけで、同じ「読み」でも自然な「読み」に変わっていきます。(次回はトーク編14「話し言葉と書き言葉のなりたち」です)

本日のごのへの・ご・ろ・く

「にて」は全部「で」に書き換えちゃいましょう!