落語協会(柳亭市馬会長)の新真打ち5人が3月21日からの上野・鈴本演芸場下席で誕生する。木久扇門下の林家ひろ木(37)、一朝門下の朝也改め春風亭三朝(37)、小三治門下のろべえ改め柳家小八(40)、金時門下の時松改め三遊亭ときん(41)、馬風門下の鈴々舎馬るこ(36)。以前は、春風亭小朝の「36人抜き」など抜てき昇進もあったが、最近は入門年次ごとの年功序列に沿った昇進が主流。今回の5人も02年から03年に入門した。

 ひろ木は師匠の勧めもあって前座のころから津軽三味線を習っており、「津軽三味線と落語の二刀流で、自分らしくやっていきたい」、三朝は「噺の良さを引き出して、噺を楽しんでもらえる落語家に。師匠より2つ数の多い名前となったので頑張りたい」、子供が生まれたばかりの小八は「古典落語に1つ風穴をあけて、自分らしさを出していきたい」、ときんは「出てくるだけで和やかな空間を作る自信はある。息を吸うだけでも笑わせる落語家に」、馬るこは「大喜利力には自信がある。初心者からマニアまで爆笑させる馬るこ落語を目指したい」。

 師匠たちもエールを送った。木久扇は「頭のいい子で、経済も知っている。350万円の奨学金も前座の時に返済した」、一朝は「コツコツ築き上げるタイプ。三朝は6代目尾上菊五郎の俳名で、名優に1歩でも近づいてほしい」、小三治は「瀬戸内海の海賊の末裔(まつえい)。基礎はできているから、どうやっても大丈夫」、金時は「私の独演会で、一番前で居眠りするなど、しくじりも多かった。将棋の『歩』が敵陣に入り、ときんに裏返るように、大暴れしてほしい」、馬風は「好きなようにやらせたら面白いと思った。ヨイショに徹底して、おれ以上だな」。

 師匠に言われて、心の残った言葉も明かした。「どうしたら売れるか」を聞いたひろ木に、木久扇は「空を飛べば、売れるようになる」と答えたという。ひろ木は「自分だけの芸を極めろということだと思った」。三朝は「『おれのコピーになるな』と言われ、いろいろな人に教わるようにした」という。昨年。喜多八さんが亡くなってから小三治門下になった小八は「数年前に師匠(喜多八)から『そうやればいいんだ』と言われ、『道灌』をやった時に小三治師匠に『いい道灌だった』と言われた」、ときんは「酒を飲むと、昔のしくじり話をしてくれて、『お前に同じしくじりをしてほしくない』と言われた」、馬るこは「『先輩にかわいがられろ、後輩は引っ張り上げろ』と言われた。だから、後輩に恨まれないように努力している」。

 落語協会所属の真打ちの数は今回の5人を加えて、ちょうど200人になる。過去最高の真打ちの人数となるが、三朝は13年、馬るこは14年にNHK新人演芸大賞の大賞を受賞した有望株がそろう。市馬会長は「それぞれ味が違い、面白いと思う。せっかく好きな道に入ったのだから、自分の思う芸をやり続けてほしい」と鼓舞した。【林尚之】