大みそかのNHK紅白歌合戦の出場者が発表された。今年は「目玉」と言える意外な出場歌手がいない地味な顔触れになった。

NHKは来年で引退する安室奈美恵、桑田佳祐への出場に向けた説得作業を今後も続ける意向を明かしているが、かなりハードルが高そうだ。実は水面下で、人間国宝である歌舞伎俳優坂東玉三郎(67)のサプライズ出場のプランがあったという。

 歌舞伎界きっての女形の玉三郎は、95年にシャンソンを中心とした初アルバム「一寸おたずねします」をリリースするなど、歌とは深い縁があった。日本を代表するシャンソン歌手だった越路吹雪さんとは親交が深く、大の越路ファンを自認していた。今年3月に日生劇場で行われた越路さんの三十七回忌追悼のコンサートに出演し、11月に越路さんの歌唱で知られるシャンソンの名曲「枯葉」「群衆」「人の気も知らないで」など14曲を収録したアルバムを発売した。また、11月7日にNHK総合「うたコン」に出演してシャルル・アズナブールの名曲「妻へ」を歌い、11月8,9日には越路さんゆかりの地の銀座・ヤマハホールでコンサートを行い、「愛の讃歌」「枯葉」などを披露していた。

 そんな玉三郎にNHKが紅白出場のオファーを出していたというのだ。玉三郎は過去の紅白に踊りでゲスト出演したり、審査員として登場したことはあるが、実現すれば、歌手としては初めてとなる。今年で68回目を迎える紅白の長い歴史でも歌舞伎俳優が歌手として出場するのは初めてという「サプライズ」ともなるプランだった。

 来年4月には紅白の会場でもあるNHKホールでシャンソンコンサートを行うことも決まっていた。NHK側も玉三郎の白組出場に期待を寄せ、昨年の紅白で女優大竹しのぶ(60)が初出場し、「愛の讃歌」を熱唱した時の再現にする予定だった。しかし、最終的に玉三郎はオファーを断ったという。その理由は定かではないが、12月は25日まで歌舞伎座に出演し、来年1月は2日から大阪・松竹座で舞踊公演を行うなど多忙なスケジュールだった。いつも大みそかは静かに過ごすという玉三郎にとって、プロの歌手が一堂に会する歌の祭典である紅白にあえて出る気持ちにならなかったのだろうか。【林尚之】