歌舞伎俳優市川右近(52)の長男武田タケル君(6)が東京・歌舞伎座「六月大歌舞伎」で初お目見えする。このほど、都内スタジオで宣伝用の紋付き写真の撮影を行い、歌舞伎俳優としての「初仕事」を行った。

 撮影現場に取材に行くと、関係者が「さっき、下の歯が抜けちゃいました」。なんとも縁起のいい日に遭遇した。タケル君は現在、幼稚園の年長組。大きくなったら何になるか聞かれ「歌舞伎俳優」ときっぱり。右近は「明るくて協調性のある性格。お客さんに喜んでいただける、華のある役者になってほしい」と話した。

 タケル君は、通し上演する「義経千本桜」のうち、第1部「碇(いかり)知盛 渡海屋・大物浦」で、「銀平娘お安実は安徳帝」を演じる。化粧をして、せりふもある重要な役だ。取材終盤、タケル君が「とーもーもーりー(=知盛)、さーらーばー」と、大きな声でせりふを言って聞かせてくれた。稽古を積んでいることがよく分かる声だった。

 4年前、タケル君が2歳の時、右近の師匠で「タケル」の名付け親でもある市川猿翁(76)の楽屋にあいさつに連れて行くと、猿翁に「初舞台は5歳だね」と言われたという。1年遅くなったが、今回の初お目見えを前に猿翁は「無心にやりなさい」とアドバイスをくれた。右近は「相手は子供だぜ、って思いましたが、大人になってくると無心にできなくなってくる。押さえ付けたりしないようにしたい」と話した。

 「歌舞伎を好きになるように好きになるように育ててきた」(右近)だけに、タケル君は歌舞伎にはまっている。「ワンピース歌舞伎」も最前列で観劇したという。自宅での芝居ごっこ、自分が演じる安徳帝を絵に描くなど、歌舞伎漬けの日々だ。

 大人でも大変な25日間休みなしの出演だが、タケル君は「楽しみです」と笑みを見せた。無事に公演を終えたらごほうびに「動物戦隊ジュウオウジャー」のグッズを買ってもらうのを楽しみにしている。【小林千穂】

 ◆武田(たけだ)タケル。2010年(平22)4月18日、東京生まれ。スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」から命名された。澤瀉(おもだか)屋一門の、市川猿弥が大好き。市川中車の長男団子を慕っており、楽屋によく遊びに行く。好きな食べ物はから揚げ。