◆寄生獣 完結編(日)

 寄生生物にとりつかれると人は感情を失い、人を捕食する。主人公は偶然から寄生が右手にとどまり、感情を持ちながら寄生生物と共生する青年(染谷将太)だ。右手役阿部サダヲと巧者同士は漫才コンビのように息が合う。右手の「超能力」を生かしながら、寄生生物狩りに執念を燃やす。

 岩明均氏のコミックが原作。中高年には縁薄いジャンルだが、共感できるドラマが織り込まれ、滑らかな特撮技術に引き込まれる。

 前作に続き、人間対寄生生物の全面戦争の幕が開く。ウルトラマンの昔から、滅ぼされる敵役怪獣にはいつも悲哀の印象が貼り付いて見えたが、今回はあまりにも悲しい。

 寄生生物のリーダー(深津絵里)は人間の子を産んだことから母性に目覚め、その子のために命を盾にする。深津が悲しい作り笑いと漏れ出る本当の笑いを演じ分ける。戦いの場では人間の「殻」を破って醜怪な姿をさらすが、ヘルメットで表情の見えない警察の特殊急襲部隊も怖い。放射性廃棄物処理場も象徴的な背景となる。破壊的なのは本当はどちらなのか。

 古くは「ノアの箱舟」で投げかけられた自然破壊への戒めが繰り返される。【相原斎】

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