「脳男」「土竜の唄」「予告犯」…最近の生田斗真(31)は自分とかけ離れたキャラクターに挑んでいる。ワイドショーで、めいっ子に目尻を下げるエピソードを見たから、なおさらそう思う。対照的に今作は内なる声を聞くように「良心の塊」を演じている。

 恋人を殺された元教師(生田)は真相を探るために裏組織に潜入する。虫も殺せない男は一線を越えられない。昔の教え子が組織のワナに掛かれば、助けなければ気が済まない。なかなか核心に迫れない。

 縛り上げられ、血まみれになっても人の道を外さない叫びは、心の底から突き上げるような熱演だ。滝本智行監督が「素の魅力を出せればこの作品はいける」と言った意味が分かる。

 眼力で人を殺す鯨(浅野忠信)やナイフ使いが生きる術の蝉(山田涼介)も登場して、敵味方分からないまま話をややこしくする。

 伊坂幸太郎氏の原作は冷酷な殺し屋にも、相手の痛みを背負った影が明確だ。鯨は亡霊を見るし、蝉は身を削るように鋭利になっていく。浅野と山田が静と動で役柄を掘り下げている。

 菜々緒が今回も悪女にはまり、山崎ハコが怪演。見どころは多い。【相原斎】

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