50歳でバツ2のおっさんがここで、これを書いてええんか、という映画です。ザッツ・ファンタジーの童話「星の王子さま」の権利管理者が公式に認可した「その後の王子さま」の物語ですわ。30年前、菊池桃子がリリースした「卒業」の歌詞で初めて、原作者サンテグジュペリさんを認識して「舌かみそうな名前や」と思ったもんです。

 教育ママ(吹き替えの声・瀬戸朝香)が命じるレールに乗ってた少女(同・鈴木梨央)が、隣に住む元飛行士の怪しいおじいちゃん(同・津川雅彦)に感化され、ついには王子さまを探す旅に出る-。

 キーワードは「問題は大人になることじゃなく、忘れること」。マーク・オズボーン監督は原作の雰囲気を残し、原作を包み込むように意識したとか。

 実写みたいな空、雨、空気をバックに描くアニメーションは、温かみ、もの悲しさをリアルに訴えかけます。セリフはちょっと抽象的やけど、別に「理解」せんでも感じたらええんやないかな。津川さんの優しい声に感動し、梨央ちゃんの末恐ろしい出来上がりっぷりに耳を疑いました。見てよかったと素直に思えた1本でした。【加藤裕一】

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