序盤に見せ場がある。群衆の上で乱高下するヘリコプター。中ではジェームズ・ボンドが謎の男と組んずほぐれつの格闘を演じる。

 ヘリは群衆をなめるように下降し、舞い上がる。ヘリの内外、上空から撮影して、よどみがない。どうやって撮ったんだ、と思う。いきなりわしづかみだ。

 悪の組織スペクターとの全面対決。首領は体は弱そうだが悪知恵が働く。嫌みを極めたようなキャラで、英政府内にも手を回し、00部門も存亡の機だ。

 身体能力の面でボンドを脅かすような殺し屋は出てこない。組織VS個人、ボンドの疎外感の色合いがより濃い。張り巡らされた組織のクモの巣の中で、もがき苦しむ図式だ。

 6代目007のダニエル・クレイグはどちらかといえば悪人顔だが、凶悪化する組織に対抗するにはこのくらいの面構えの方がリアルなのだろう。

 首領役のクリストフ・ヴァルツはいやらしさ全開の好演だが、ダークサイドに陥る「弱み」の表現がうますぎて、憎みきれない。007映画の場合はどうだろう。女優陣はレア・セドゥのツンデレ、51歳のボンドガール、モニカ・ベルッチの哀愁と振れ幅が大きい。【相原斎】

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