森田剛はインタビューに感じるままにふわっと答える。同じV6でも岡田准一が理路整然と話すのとは対照的だ。演技も感覚型と積み上げ型と言えるだろう。その直感で数々の難役をものにしてきた森田が今回は連続殺人鬼に挑んでいる。

 古谷実氏の原作コミックに描かれた主人公は無表情のまま脅し、殺す。そして平然と暮らしている。

 映画は友人役の浜田岳の目線で語られる一見コミカルな前半パートと、主人公の正体が明確になるダークな後半とトーンを変える。そんな前半のさりげない会話でも微妙にずれる会話やどこか焦点の合わない目で、森田は気味悪さを漂わせる。後半の過激な暴力シーンよりよほど怖い。

 どうやっても同化できない主人公なら、操り人形のように心を空洞にしてしまえ、ということなのだろうか。渇いた演技だ。

 むしろ後半、まれに目元が緩み、人間味がのぞく。すさまじいイジメ、求め続けた母の愛情…殺人鬼にならしめたゆえんがそんな表情に重なる。感覚的な演技は計算したようにピタリとはまる。ムロツヨシ、佐津川愛美と合わせ、メーン4人それぞれの抑揚が見事なアンサンブルとなっている。【相原斎】

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