犯罪の「質」は映画の中でも時とともに大きく変化している。シドニー・ルメット監督、アル・パチーノ主演の「セルピコ」(73年)以来、警察内の腐敗は前提条件となった。O・J・シンプソン事件(94年)後は、殺人もやったかやっていないかよりは、動かぬ証拠を押さえられるか、逃げ切るかの2択に重きが置かれるようになった。

 そんな善悪のボーダーレス化を極めたのがこの作品だ。元軍人や悪徳警官で結成されたギャング団が、ロシアンマフィアに弱みを握られ、不可能とも思える強奪計画に駆り立てられる。

 ギャング団はワルではあるが、そこに至る理由には同情できる部分があり、ぎりぎり共鳴できる一抹の良心もある。感情移入の余地を残して作りあげた複雑なキャラクターだ。「オデッセイ」のキウェテル・イジョフォーや「カポーティ」のクリフトン・コリンズ・Jrら注目作の脇で光った個性派がキャラを立てる。

 塀の向こうに転がり落ちるか、命を落とすか。メインキャストの10人が綱渡りのように危険をくぐり抜けながら終盤になだれ込む。「欲望のバージニア」(12年)のジョン・ヒルコート監督は先を読ませない。【相原斎】

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