ターゲットはケニアで自爆テロの準備が進む一軒家、司令本部は米軍ネバダ基地と英国。現場周辺の情報は、虫、鳥に模した超小型カメラや無人爆撃機ドローンの“空の目”を使ってリアルタイムで集め、遠く離れた室内で決断を下す。ところが、爆撃目標の壁際に、少女がパンを売りに来てしまった-。

 倫理的に反対する者。「点数制」による法に照らした上で、少女1人の犠牲と引き換えに数十人の命を救う正当性を主張する者。ミサイルの着弾点を数メートルズラして“努力”すれば…てな言い訳を考える者。「世界一安全な戦場」で意見を戦わせる人は、いろいろや。しかし、いくら“空の目”がある言うても、臨場感はない。「私はわかってる」と思っても罪の意識は、どっかで薄い。

 責任逃れに最終決断をたらい回しにする連中にムカムカし、無機的な作戦にゾッとする。戦争は怖いけど“血の通わん戦争”はもっと怖い。「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」のギャビン・フッド監督の手腕、オスカー女優ヘレン・ミレンのやるせない演技が光る。相棒やないが“あなたの正義を問う”映画です。【加藤裕一】

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