妹を亡くし生きる意味を失った万次(木村拓哉)が、なぜか不死身にさせられ、妹に生き写しの凜(杉咲花)の敵討ちの手助けをする。

 木村の目の力にぞくぞくした。切り合いで右目を切られたため、冒頭を除き、左目だけで、悲しさ、むなしさ、疑念、愛情、制御できない怒りも表現している。

 凜が手助けを必死に頼み込む様子をじっと見ている場面、まばたきをほとんどせず、心底まで見通すような視線を向ける。善や悪は関係ない、親の敵を討ちたい、と凜が建前やきれいごとではない感情を発露させたのは、目の力だったのでは。あんな目で見られたら、うそはつけない。

 切って切られる2時間20分。劇画的なキャラクターが次々に現れにぎやかなため、かえって静かな目の芝居が際立つ。

 体全体の使い方にも注目だ。木村は殺陣以外の場面でも常に鉄身の刀を下げていたそう。なるほど、走り方も刀を下げている者の走りだった。

 万次は強すぎない。傷の回復力も少しずつ弱まる。心を完全に預けた人が、いずれは死ぬ。それを実感する少女が、少しずつ大人になる物語でもあった。【小林千穂】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)