ウッディ・アレン監督の作品にはいつも軽妙な笑いがあり、「含み」や「余白」を楽しませる。が、今回は生まれ育ったニューヨークとハリウッドの大がかりな対比を持ち込み、2人の女性にそれぞれ情熱と癒やしを投影してコントラストが際立つ。力業の作品だ。

 「地獄の黙示録」「ラストエンペラー」と重厚さが持ち味のヴィットリオ・ストラーロ・カメラマンとのミスマッチのような初タッグに、81歳にして新たな挑戦の意欲を感じさせる。

 カリフォルニアの昼はひたすらまばゆく、ニューヨークの夜は照明も重たい。両極端を反映するように2人の女性がキャラを立てる。ハリウッドのプロデューサー助手からニューヨークのナイトクラブ支配人に転職し、その女性たちを渡り歩く主人公は対照的にふわふわしている。見た目脇役のジェシー・アイゼンバーグがはまっている。

 余白どころかはみ出すくらいに両海岸の要素を詰め込み、パターン化の極みのような人間模様で逆に笑いを誘おうというのが監督の狙いのようだ。いままでのアレン作品とはちょっとズレたところでクスリとさせられる。シャネル提供の衣装も随所にまばゆい。【相原斎】

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