車の擬人化で人気となったシリーズ第1作からもう11年、3作目の今回にはお子さま向けというにはあまりにも惜しい人情の機微がちりばめられている。

 スター・レーサーのマックイーンはベテランの域に達し、「体力」だけでは勝てない「年齢」に達している。彼のファンでもあったストームに技術力で抜かれ、「過去のレーサー」とさげすまれる。あてがわれたトレーナーのラミレスは素人同然で、自分の置かれた立場を思い知らされる。

 が、ラミレスには秘めた夢とガッツがあり、2人が交わることで予想外の「力」が生まれていく。

 2人が迷い込む最下層の泥んこレースはストリート・ファイトのような趣があり、かつての師をたずねる旅、はい上がる過程には出来のいいスポ根ドラマの味がある。車の質感を照らす光の加減に息をのむ。

 目の場所をヘッドライトではなく、フロントガラスに設定したのもシリーズ成功の一因で、「顔」を大きく取った分だけ「ファインディング・ニモ」にも勝る表情の豊かさがある。

 現代社会の巧みな投影は「ズートピア」をほうふつとさせ、予想外のラストに続編の予感がした。【相原斎】

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