元お笑い芸人という異色の経歴をもつ西田征史監督が生み出した喜劇舞台を映画化した。カラッと笑えてホロッと泣ける、後味の良いコメディーが誕生した。

 関ジャニ∞丸山隆平(33)ふんする主人公は、人が良すぎる元泥棒。かつての仲間に頼まれ忍び込んだ大豪邸で、次から次へと他人に間違えられ、身分を隠すべくその役になりきってる。

 舞台原作とあり、物語のほとんどは豪邸という密室空間での会話劇。家主の絵本作家(市村正親)、出版社の編集者(石橋杏奈)、豪邸に押し掛けるセールスマン(ユースケ・サンタマリア)の濃すぎるトリオと繰り広げるドタバタ劇は、舞台を見ているかのようなライブ感が味わえる。

 人の良さがにじみ出たような、丸山の“困惑顔”もミソ。意外にも初の映画単独主演だが、役にピッタリはまり、完成度が高い。マッシュルームヘアの奇抜な絵本作家を、出オチにとどまらず文字通り“熱演”した市村には、何らかの助演男優賞をささげたい気分。

 コメディーに振り切らず、最後はホロリと涙を誘う演出も。試写室で涙が出るほど笑ったのか、泣いて笑ったのか分からないけれど、心地よい時間だった。【杉山理紗】

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