タイトルの「5パーセント」は、主人公サリーに残された視野。先天性の病気で網膜剥離を起こし、手術でなんとか確保できた視力は、健常者のわずか5%だった。文字はおろか、目の前の人の見分けもつかない。それでもホテルマンの夢を諦められないサリーは、視覚障害を隠して5つ星ホテルの研修に挑む。

 目がダメなら、耳や鼻を使えばいい-。どんな状況も前向きに捉えるサリーには胸を打たれる。五感を研ぎ澄ませ、それでもダメなら丸暗記。障害をものともせず、夢に向かって一直線だ。

 協力者の出現、鬼教官の登場、突如訪れる恋の予感、そして挫折。青春を彩る要素にも不足はない。単調な構成ではあるが、テンポのいい展開にさわやかな音楽が心地いい。鑑賞後のえもいわぬすがすがしさは、筆舌に尽くしがたい。

 これらが全て実話だというから驚きだ。サリーのモデルとなったサリヤ・カハヴァッテさんは、15年もの間、視覚障害を隠し通したという。当たり前に過ごしている今この瞬間に感謝し、大切な人たちをもっと大切にしようと思える、ザ・ハートウオーミングムービーだった。【杉山理紗】

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