シャーリー・マクレーンは、90年の来日時にロングインタビューしている。当時57歳。記事には「還暦近くでもミニスカートが似合う女性」と書いている。そんな彼女が「終活」を演じる年齢になった。

 広告業界で名を成し、優雅な隠退生活を送る主人公は、自分の訃報記事が気になり始める。コネのある地元紙に「事前取材」を依頼するが、担当記者の周辺リサーチは思わしくない。

 30年代生まれの彼女が、男性社会でのし上がった結果、周囲の印象は高飛車、無遠慮…。命令口調の彼女に腰が引けていた記者だが、同じ女性としてガッツにひかれ、「立派な記事」への共同作業が熱を帯びる。

 演技なのだろうが、時折ぎこちないマクレーンの動きがリアルだ。取材時の若々しさを思うと、ちょっと悲しい。記者役のアマンダ・セイフライドが今どきの割り切りと、秘めた情をバランスよく見せている。

 日本の禅にも通じ、達観した印象のマクレーンが自身の訃報記事を気にするとは思わないが、この映画の製作にも関わった理由はよく分かる。実のある人生の「実」とは何かがじわっと伝わる。結末には理想の終活が見えてくる。【相原斎】

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