地方で育った人の「あるある」と青春時代の都会への憧れが、ギュッと詰まった1本。どんなに退屈でも誰も迎えになんて来てくれないし、誰もが「何者か」になれるわけじゃない。タイトルからはシンデレラストーリーを連想するが、痛い現実を突き付けてくる。

主人公「私」(橋本愛)は、何者にもなれず東京から田舎へ戻ってきた27歳。旧友と再会したノリで、高校時代の憧れだった椎名君(成田凌)に会いに行く。

看板がデカい国道沿いの飲食店、外観がお城みたいなラブホテル、寂れたゲーセン。「私」を通した田舎の描き方が嫌にリアルだ。都会の人たちがイメージする、原色絵の具で表現できるような「きれいな田舎」なんて実際は少ない。

成田演じる交友関係の広いキラキラ男子も、門脇麦がふんするちょっと大人びて近寄りがたい女子も、こういう子いたわ! そして平凡すぎる「私」。うなずきながら見てしまった。

この作品に誰より共感できるのは、田舎から都会へ出てきたのに何者にもなれずにいる大人たちだろう。地方出身の記者としては、東京から田舎に戻ることを「都落ち」と呼ぶ劇中のフレーズがグサリと来た。【杉山理紗】

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