◆白ゆき姫殺人事件(日)

 巧者、くせ者がそろった中で映画初出演のモデル菜々緒の好演が目を引く。

 山中で発見される美人OLの刺殺体。ツイッターをツールに職場仲間が垂れ流すゴシップが「真相」をゆがめていく。湊かなえ原作の「今」をとらえたミステリーだ。

 殺されたOL菜々緒の二面性がキーとなる。美人で気立てのいいはずが、裏には正反対の一面が。まるでTBS系「内村とザワつく夜」に出てくる「嫌なオンナ」の典型である。

 バラエティーは劇画的に二面を際立たせるが、中村義洋監督は同じはずの場面が微妙な角度のズレで違って見えるような繊細な演出をほどこしている。さっきの笑顔があらためて見ると悪意に満ちたものになっている。その違いを目と口元だけで演じ分ける菜々緒がうまい。ファッションショーでは絶対に見せない「怖い笑顔」である。

 主演の井上真央は「華」を隠し、綾野剛はこれ以上ないくらい情けない。蓮仏美沙子の語りの現実味は半端ではない。貫地谷しほりは思いっきりむさ苦しく、ダンカンも怪演だ。

 それでも菜々緒の印象がまさった。【相原斎】

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