大阪府豊中市の国有地を格安で購入した学校法人「森友学園」の一連の問題で、名前が取りざたされている安倍晋三首相と、昭恵夫人。ニュースを追いながら、もう15年以上も前だろうか。首相のおひざ元、山口で見た「アッキー」の素顔を思い出している。

 昭恵夫人は、夫に代わり、地元の山口4区(下関市、長門市)を預かっており、選挙時には、区内を遊説。06年の第1次安倍内閣誕生前の選挙だったと思う。投開票当日の取材に備えて、前日に山口へ入り、事務所へうかがった。

 出入り口にいた地元の町会議員に様子を聞くと「アッキーか?」。即座に愛称で返ってきた。昭恵夫人は、98~02年、下関のFMラジオ局で「アッキー」を名乗り、ラジオパーソナリティーを務めていた。

 事務所にいた人たちは一様に、昭恵夫人を、親しみを込めて「アッキー」と呼んでいた。その「アッキー」は、遊説を終え、カジュアルな装いだったのが印象的だった。

 そして、ある支援者が「みな、アッキー、アッキーと言うけど、本当は、アッキーじゃなくて、杏里だぞ」と言い出した。

 地元では歌手の杏里似であることから「下関の杏里」と呼ばれることもあったそうだ。その支援者が言った言葉も記憶に残る。「あまりに杏里に似てると言われるから、カラオケの十八番は杏里の歌らしい」。聞けば、たしか「オリビアを聴きながら」だったと記憶しているが、夫人が杏里になりきって? 熱唱していたそうだ。

 え? 安倍晋太郎氏の御曹司、安倍晋三氏の奥さんが、杏里になりきって熱唱? そのノリの良さに驚きつつ、本人に会うと、天真らんまんといった女性だった。当時、事務所にいた関係者は「家では晋三君より強いらしいよ。思ったことは何でも、言っちゃうらしいから」とも話していた。

 ざっくばらんで気さく、豪毅なお姉さん-といった印象。あの姿を思い出し、そして重ねながら、森友学園問題の行方を見ている。【村上久美子】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)