学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で思わぬ「恩恵」を受けた「ゆるキャラ」がいます。大阪府のマスコットキャラクター「もずやん」です。ゆるキャラブームに乗り遅れていたもずやんですが、神風が吹きました。

 「広報担当副知事」の肩書を持つもずやんは今年12月末までの1年間で、認知度調査などの目標値を達成できなければ、広報担当副知事から降格となります。森友問題が発覚してから上司の松井一郎大阪府知事(53)が会見する機会が増え、もずやんのメディアへの露出が激増。降格を回避する目標達成数値の1つ「メディアの登場回数200件(年間)」を楽々とクリアしそうです。

 大阪府庁で松井知事が会見する際、背後にあるボードにはもずやんのイラストがあります。2月中旬以降、森友問題を巡り、松井知事は連日、会見を開きました。多いときには1日に2回、関西ローカルだけではなく全国ニュースにも取り上げられました。松井知事の背後でほほ笑むもずやん。

 府の担当者は「同じ時間帯に各局のニュースに登場することもありました。1つのニュース番組に登場すれば1回とカウントします」と説明。メディアの登場は、一昨年度は新聞92回、テレビ56回で計148回。今年2月以降の正確な登場回数は出ていませんが、昨年度は新聞132回、テレビ76回で計208回。森友学園の疑惑が次々に発覚した2月中旬以降、登場回数が激増し、昨年度の登場回数を押し上げたようです。

 降格を免れる条件は5項目あります。

 <1>府民の認知度75%

 <2>ツイートの閲覧数(月平均)200万件

 <3>イベントの出演回数(年間)400回以上

 <4>もずやん名刺の配布枚数(年間)2万枚

 <5>メディアの登場回数(年間)200件

 降格が決まるのは今年12月末。達成が難しいと思われていた<5>メディアの露出が森友効果でクリアできそうな勢いです。

 もずやんの前身は1997年に大阪で開かれた国体のマスコット「モッピー」。大阪府の鳥に指定されている「モズ」をモデルにしました。3年前に府内にいた92体のキャラを整理し、モッピーを府の「顔」にしようとしましたが「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」が商標登録していたことが判明。名前の変更を迫られて公募し、決まったのがもずやんでした。再デビューに合わせて「広報担当副知事」に任命されました。

 昨年8月には府が財政難のため、もずやんは自らの出張などの活動費を稼ごうとグッズを作って販売できる権利を売り出したましたが応募はゼロ。府の担当者は「思ったより人気がなくショックだった」。松井知事からは「一から出直すように!」のゲキも飛びました。

 今年に入り酉(とり)年に合わせて知名度をアップさせる「羽ばたけ!もずやんプロジェクト」がスタート。2月にはお笑いコンビ「藤崎マーケット」を訪ね、人気ものになるコツを学びました。両羽を羽ばたかせながらステップを踏み、「ラララライ体操」に挑戦しました。

 さらなる認知度アップへ、4文字熟語の一部を替えた「4もず熟語」が特技のもずやんは、これからも「一鳥懸命(一生懸命)」頑張るそうです。

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)

会見する松井一郎大阪府知事の背景のボードには「もずやん」のイラスト(撮影・松浦隆司)
会見する松井一郎大阪府知事の背景のボードには「もずやん」のイラスト(撮影・松浦隆司)