大阪のおばちゃんと言えば、派手なヒョウ柄-。浪速のシンボル・通天閣(大阪市浪速区)の近くの新世界市場にヒョウ柄の超ディープスポットがあります。ヒョウ柄を中心にアニマル柄約500点を扱う婦人洋服店「なにわ小町」。店長の高橋真由美さん(66)はヒョウ柄が大好きなコテコテの大阪のおばちゃんです。

 通天閣から徒歩3分。戦前に建てられた古い長屋が連なる商店街「新世界市場」。その一角に同店はあります。店頭にはヒョウ柄のTシャツ、ワンピース、スパッツがズラリ。接客する高橋さんの胸には、にらみつけるヒョウの顔があります。

 「中途半端はアカンで。ドカンと着るのがヒョウ柄やで」。着こなしについて説明する高橋さんの声はハスキーです。「ああ、この声か。酒もタバコもやるからな」。ヒョウ柄はもちろんですが、かなり強烈なインパクトです。

 2010年に浴衣などの和装と雑貨の店としてスタート。5年前から若いころから好きだったヒョウ柄を置くようになりました。「ここは新世界。たいがいのことは許される街ですねん。どうせやったら好きなヒョウ柄をって。まあ、とにかくこの街は懐が深い」。人情味あふれる街とヒョウ柄のイメージがピタリと合ったのでしょうか。「大阪らしい」と大うけし、テレビや雑誌に取り上げられ一躍、全国区になりました。いまでは遠くは北海道や九州からヒョウ柄を求めて観光客が訪れるようになりました。客層は全国のおばちゃんだけではなく、老若男女が訪れます。

 男性客から「男性用は?」と尋ねられると、高橋さんは豪快に笑います。「うちは無理やり男用やねん」。つまり女性用ですが、男女兼用ってことですな。メーカーに頼んでヒョウがTシャツの中央でほえるオリジナル商品(税込み2900円)も作りました。「横向きはあるけど、正面に向いてほえるデザインはあんまりないねんで」。高橋さんが胸を張ると、いまにもヒョウが襲いかかりそう。

 取材中、秋田県から来たという10代の女性が訪れました。ヒョウ柄のTシャツとスパッツを購入し、同店で着替えると、コテコテの攻めのファッションで街へ繰り出しました。女性は「せっかくの大阪ですから。大阪弁で言う『目立ってなんぼ』です」。とても楽しそうでした。

 大阪のおばちゃんと言えば、ヒョウ柄のほかにもトレードマークがあります。ちりちりパーマの「大仏パーマ」、「飴ちゃん」です。残念にも? 高橋さんは大仏パーマではありませんが、ヒョウ仕様です。明るい茶色をベースに何色もメッシュが入っています。「どや、似合っているやろ」。

 取材が終わると、高橋さんがヒョウ柄のパッケージに「まいど」などの文字が入った「飴ちゃん」を1袋を持ってきました。お客にプレゼントしているそうです。初対面の記者にも「これ、持っていき!」。「1袋も…」と断ろうとすると、「遠慮したらアカン!遠慮は、ほかでしい」。おおきに、まいど!

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)