維新の前代表の橋下徹前大阪市長(48)にツイッターで罵倒されたとして、日本維新の会の丸山穂高衆院議員(33=大阪19区)が離党届を提出しました。“場外バトル”の発端は丸山氏の「口の利き方」に橋下氏がかみついたことでした。今回の騒動で茶髪弁護士だった橋下氏にインタビューしたときのことを思い出しました。なぜ、これほどまでに「口の利き方」にこだわるのでしょうか? 橋下氏は幼いころから母に3つの「べからず」をたたき込まれました。当時の取材ノートには橋下氏の言葉として「ひとクセもふたクセもあるスーパーかあちゃん」とあります。橋下氏が小学校高学年になるまで妹と2人を女手ひとつで育ててくれました。母の「しつけ」には明確な基準が3つあったそうです。

 <1>人をあやめない(殺さない)

 <2>相手が精神的に回復できなくなる言動をしない

 <3>年上の人に対してあいさつ、ケジメある行動を取る

 今回、丸山氏に激怒した理由として、3つ目の「年上の人-」が該当します。目上の人である維新の松井一郎代表に対して、丸山氏の「言葉遣い」が許せなかったのでしょう。

 維新は衆院選で公示前の14議席から11議席に減らしました。この結果を受け、丸山氏は先月24日、ツイッターに「松井代表が再び再選してもしなくても、堺(市長選)・衆院選総括と代表選なしに前に進めない」と投稿し、代表選を行うよう求めました。

 さらに「民進含め他党にブーメランあかんと厳しく言うといて、自分とこだけ緩いのはあかん、丸山も次4期目とかどうでもええ話、大阪と日本がよーなるかどうかが全て。それ考えたらどう考えても維新は総括と代表選が必要。若造に言われんでも代表は言うだけの人ちゃうし、ちゃんとやりまっせですね、失礼をば。」と投稿しました。

 これに対し橋下氏は「ちゃかしたような言い方」「言葉遣いから学べ、ボケ!」とボケを連発。「大阪での大阪維新の活動を理解することなく、ふざけた物言いをする国会議員がいるところと付き合うと精神衛生上良くない」と顧問を辞任しました。

 思い起こせば、府知事、市長時代も「口の利き方」について数々のバトルがありました。府知事時代に橋下氏は全職員にあてて税金に対する意識の低さを嘆くメールを送信しました。

 和歌山市の紀の川大堰(ぜき)からの利水撤退で府の損失が約380億円に上ったことへの府幹部の議会答弁について「どうも税金に関して、僕の感覚と、役所の皆さんの感覚は違います。恐ろしいくらい、(職員の)皆さんは冷静です。民間の会社なら組織あげて真っ青ですよ!」などと、税金の投入に敏感になるべきだと指摘しました。

 このメールに対して1人の女性職員が「このメール配信の意味がわかりません。愚痴はブログ等で行って下さい」とジャブを繰り出し「文も論理的ではなく、それなりの職についている人間の文章とも思えません…」。最後には「こんな感覚を持つ人が知事であることの方が私は恐ろしい」と返信。橋下氏は女性職員に「まず、上司に対する物言いを考えること。トップとして厳重に注意します。言い分があるのであれば、知事室に来るように」と冷静に返信。ところが女性職員は翌日「知事室にお呼びとあらば、公務をどけてでもお邪魔いたします」。この「ちゃかしたような言い方」に橋下氏はプッツン。この職員と直属の上司を府の内規に基づく「厳重注意」の処分を下しました。

 離党届を提出した丸山氏は「真実でないことまで広言され、もはや耐えられない」と精神的なダメージを強調しました。松井氏によると、橋下氏は周囲に「(辛辣(しんらつ)な表現を)オカンに怒られた」と話しているそうです。

 今回の“場外バトル”には「大人げない」という批判もありますが、橋下氏にとって目上の人への「口の利き方」はどうしても譲れない一線でしょう。これからも相手がだれであろうと、きっとまたかみつきまっせ。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)