プロ棋士になってわずか1年7カ月で三段階の昇段という、異例のスピード出世を実現した藤井聡太七段(15)。1957年、ひふみんこと加藤一二三・九段(78)が記録した史上最年少の17歳3カ月を61年ぶりに塗り替える15歳9カ月での七段昇段でした。このスピードなら八段、九段…。「七段」と呼べるのはいつまでなのでしょうか。日本将棋連盟に聞きました。

 プロ棋士は全員が四段からスタートし、その後の成績で、九段まで昇段できます。段位はプロにとってのステータス。昇段条件は細かく決まっています。

 気になるのは藤井七段がいつ八段に昇段するのか。日本将棋連盟によると、八段への昇段条件は以下の3つです。

 <1>七段昇段後公式戦190勝

 <2>順位戦A級昇級

 <3>竜王位1期獲得

 この3つのうち1つをクリアすれば八段へ昇段します。ただハードルはかなり高いようです。

 まず<1>ですが、藤井七段の17年度の勝ち星は59勝。「もし、このペースで勝ち続けるなら3年と数カ月で190勝に到達するでしょう」(日本将棋連盟)。これまで以上のペースで勝ち星を重ねていったとしても最速でも「18歳八段」です。

 <2>については藤井七段は今期からC級1組に昇級したばかりです。順位戦は将棋界で最も歴史のあるタイトル戦「名人」への挑戦者を決める戦いです。将棋界は名人を頂点にA級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の5クラスあるピラミッド構造。最上位のA級にいる10人が約1年かけてリーグ戦(順位戦)を戦い、優勝者が名人への挑戦者となります。

 デビュー2年目の藤井七段は5クラスの中で下から2番目のC級1組。「順調に1期抜けしたとしてもA級に昇級するには最低でも3年かかります」。<2>の条件では最速でも「18歳八段」です。

 藤井七段が本年度中に八段になることができる条件は<3>です。

 6月5日、竜王戦5組ランキング戦決勝(関西将棋会館)で石田直裕五段と対局します。この5組で優勝すると、各組上位者11人による挑戦者決定トーナメント(T)に進みます。強敵がそろうの挑戦者決定Tを勝ち抜くと、最難関の強敵が立ちはだかります。10~12月にかけて行われる7番勝負で、現タイトルホルダーの羽生善治竜王(47)を挑戦します。7月が誕生日の藤井七段は16歳。もし羽生竜王を撃破すれば「16歳八段」になります。もちろん史上最年少記録です。<3>が八段の最短条件です。

 将棋界の最年少記録を次々と塗り替え、歩みを進める藤井七段。まあ、いずれにしてもちょっとすごすぎる15歳です。【松浦隆司】

(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)