阪神ファンの第2の聖地とも言われる、阪神百貨店梅田本店(大阪市北区)の8階にあるタイガースショップが、訪日外国人客(インバウンド)でにぎわっています。同百貨店広報担当者によると「数年前からでしょうか。台湾などからの観光客がグッズを買い求められるようになりました」。なぜ? 売り場にいた台湾からの観光客に聞いてみました。

タイガースの帽子を購入した、台湾から来たエンジニアのチャン・ウェイさん(27)は「家族への大阪のお土産なんだ。帽子のつばの黄色がいいだろ。家族のラッキーカラーさ。きっと喜ぶよ」。関空に到着後、チャンさんが最初に訪れたのがタイガースショップ。台湾では大阪観光の人気スポットになっているといいます。

人気を集める背景には「甲子園」というキーワードがあるようです。

14年に台湾では映画「KANO」が上映され、大ヒット。同作は台湾が日本統治下に置かれていた1931年(昭6)、全国中等学校優勝野球大会(現在の全国高等学校野球選手権大会の前身)に出場した台湾代表の農業高校「嘉義(かぎ)農林」の実話をベースにした物語。嘉義農林は快進撃を見せ、決勝では中京商(現中京大中京)に敗れたものの、準優勝。チームは甲子園のファンにさわやかな印象を与え、人気を集めました。「KANO」が流行った後、台湾では日本の高校野球の聖地である「甲子園」がクローズアップされました。

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを通じて台湾の訪日観光客へ大阪の情報を配信するサイト「0-share(オーシェア)」の編集担当者は「『KANO』以降、甲子園球場内にある甲子園歴史館のツアーの問い合わせが増えました」と話します。同館には嘉義農林が出場した当時のトーナメント表などが展示されており、台湾からの個人旅行客が大勢訪れるようになったそうです。

聖地・甲子園を本拠地にする阪神タイガースのファンの応援も、台湾では話題になっています。7回の攻撃前にジェット風船を飛ばすシーンを、Facebook(フェイスブック)に動画でアップする人も。「0-share」には「ぜひ体験したい。タイガースのグッズはどこで買うことができるのか?」との問い合わせが増え、阪神百貨店のタイガースショップ、甲子園球場グッズ売り場を紹介しているそうです。

最近では「阪神タイガースの試合日程はどこで確認できるのか?」と、試合観戦を前提にした質問もあります。甲子園で観戦はできなくても、大阪のお土産にとグッズを買い求める観光客もいるようです。

阪神は16年から甲子園球場の一部ホームゲーム開催時に「台湾デー」を実施しています。台湾観光協会の協力の下、ご当地グルメの提供や、無料航空券のプレゼントなど、台湾色あふれるイベントが繰り広げられています。台湾からの訪日旅行客を球場に呼び込む狙いもあります。

台風21号による関西国際空港の一時閉鎖などの影響で、9月に関空から入国した訪日外国人客はほぼ半減しました。大阪の百貨店では、9月の売り上げが大幅に落ち込むなど影響がありましたが、関空の旅客便が全面再開した9月21日以降からの入国者数は、順調に回復しています。

政府観光局の統計によると、昨年の台湾からの訪日旅行客は約456万人で、6年連続の増加です。親日家が多い台湾では、リピーターも多いようです。台湾の「甲子園ファン」も一翼を担っています。

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)