雪組の男役スター月城(つきしろ)かなとが、今日19日に開幕する浪速の人情物「銀二貫-梅が枝の花かんざし-」で、兵庫・バウホール公演に初主演する。新人公演を終え、節目の7年目に得たチャンス。「必要なときに、必要な試練が来る。ありがたいです」。若手から主力へ-。次の扉を開ける。公演は29日まで。

 透明感あふれる美貌に落ち着きが加わった。

 「必要なときに、必要な試練が毎回、来ている感じがします。子どものときから考えても、無駄な経験は無かったと思います」

 新人公演最終の7年目。本年度の本拠地作を終え、ひとあし早く新人を卒業した。そのタイミングで、バウ初主演。あだ討ちで父を亡くし、自らの危機を寒天問屋の主人に救われる武家出身の商人、松吉を演じる。「銀二貫」は昨年、俳優林遣都主演でドラマ化もされている。

 「ドラマも見ました。映像だからできる場面もある。舞台ではどう表現するのか。映像で場面が変えられない分、私が心情で表現しなければ。役柄は、自分からセリフを発する場面より、聞き役が多い。商人らしい心情の表現、振る舞い、大阪弁でのお芝居も勉強。大阪弁だからこその人情味も課題のひとつです」

 月城は昨春、前トップ壮一帆が主演した「心中・恋の大和路」に出演。なにわ商人役の経験はある。

 「心中と似たところはありますが、心中は手代(与平役)、今回はでっち。侍の子がいかに大阪商人として学び、生きていくか。心情をしっかりと出したい」

 「心中-」では、和物の化粧、カツラの着け方もすべてが初めてだった。

 「初めてカツラを着けたので、きれいに見える自分なりの位置、着物の着こなしも勉強ばかり。カツラを合わせるときも、こんなに位置によって違うのか…と。それに、今回のポスターは『心中-』の壮さんのポスターを見ながら、化粧をしました」

 もともと月城は、快活そうな“美人顔”が「壮に似ている」と言われてきた。メークの参考にしたのも自然の流れか。壮のサヨナラ公演だった「一夢庵風流記 前田慶次」の新人公演でも、主演を務めた。先輩から学んだ技を財産とする。

 「今回は、大阪の天満が舞台なので、天満宮にも行きました。(原作の)本も読み、松吉が最初、到着したであろう船着き場にも行き、イメージをふくらませて。天神橋筋商店街にも! 初めてでしたが、大阪の活気を感じました」

 大阪天満宮では、公演の成功を祈願してきた。

 「(新人公演を卒業し)自分の時間が増え、すべてのレベルを上げたい。(バウ主演は)もう新人じゃない。ちゃんとした作品に仕上げなければ」

 舞台に登場する寒天作りにちなみ、大阪府内の寒天工場にも足を運んだ。「今でも機械じゃなくて、手作業で作っているので、実際に器具を見せてもらいました」。なんでも吸収しようとする姿勢がのぞく。

 銀二貫といえば、現代の紙幣価値なら約300万円。月城に300万円あれば、どうするか-。「銀二貫のメンバーで、札束を並べて『わー、こんなにあるんだ~』って、見てみたいですね。これだけの価値があるのかって」。即座に、仲間との「時間の共有」を口にした。座長としての自覚を持ち、舞台を作り上げていく。【村上久美子】

 ◆浪華人情物語「銀二貫」-梅が枝の花かんざし-(原作=高田郁氏、脚本・演出=谷正純氏) 大阪の書店員らが大阪ゆかりの小説の中から“ほんまに読んでほしい”本を選ぶ賞の第1回選定作(13年)。時代小説家の高田郁氏の小説を舞台化。あだ討ちで父を亡くし、寒天問屋の主人に銀二貫で命を救われた武士の息子「鶴之輔」が「松吉」と名を改め商人として生きる様を描く人情物。

 95期の月城主演で、同期の礼真琴(星組)柚香光(花組)朝美絢(月組)桜木みなと(宙組)に続き、全組でバウ主演となる。

 ☆月城(つきしろ)かなと 12月31日、神奈川県生まれ。09年「Amour それは…」で初舞台。雪組配属。13年「Shall we ダンス?」で新人公演初主演。14年「一夢庵風流記 前田慶次」、今夏の「星逢一夜」でも新公主演。身長172センチ。愛称「れいこ」。