月組トップ龍真咲は「夢」と「愛」を詰めたステージで、16年半の劇団生活に別れを告げる。10日に兵庫・宝塚大劇場で退団公演「NOBUNAGA<信長>-下天の夢-」「Forever LOVE!!」が開幕した。芝居は織田信長の「夢」を龍のタカラヅカ人生に重ねて描き、全編ロックでつづる斬新な和洋ミュージカル。「愛」をテーマにしたショーは、フィナーレまでフルスロットルで駆け抜ける。宝塚公演は7月18日まで。東京宝塚劇場は8月5日~9月4日。

 アイドルのようなルックスに、やんちゃな少年の心。多様な顔で4年を超えて月組を率いてきた龍は、最後までスタイルを変えない。挑戦を続ける。

 「最後は日本物にしたかった。なおかつ、情熱的で刺激的な役を演じたかった。日本物とロックの融合。期待通りに作り上げたい」

 天下統一の「夢」を追い続けた織田信長と、子供の頃からあこがれた宝塚の世界へ入り、夢を追い続けてきた自らの思いが重なる。

 「信長と、龍真咲の人生を掛け合わせたような感じ。昔よく言われていた“やんちゃ”な部分とか、下級生時代にあった新鮮さとか、トップになってからは出せなかった私もお見せできるのではないかと」

 信長に「龍真咲」の16年半をすべて投影させるつもりだ。芝居は「敦盛」を舞って幕開け。「人間五十年 下天のうちをくらぶれば 夢幻のごとくなり…」の有名な一節にも共感する。

 「生きているうちに、すべてを遂げようという気持ち。(宝塚人生に重ね)考えさせられます。ザ・和物から始まって、ギュイーンと(転換して)いきます」

 ロック版・信長で「夢」を勢いよく描き、「愛」をつづるショーもハイテンションで駆け抜ける。「プロローグからガンガン飛ばしてフィナーレへ。しんみりと送られたくない」と言い、湿っぽい雰囲気を嫌う。

 次期トップは9年目の珠城りょうに決まり「自分の信じた道を恐れずに、周囲を見て進み、新しい時代を」と話す。自らも21世紀入団で初のトップ就任で、5組中、最下級生だった。

 「すごく若い組だったので、私が『あっちやで!』って引っ張って、みんなは、個性のエネルギーをどんどん出してくれた。頼もしい組になったと思います」

 充実した月組を築けた-そんな自負がのぞく。

 「でも、多分(千秋楽当日は)泣く。泣かされると思う。まだ、そんな(泣く)空気、全然ないけど!」

 あっけらかんとした取材会。龍は小学校から高校まで一貫校で、宝塚でも月組一筋。「別れに免疫がない」のが要因のようだ。

 「みんなと別れた後、どうなるのか…。自分でも楽しみ。(退団後)年内はダラダラしたいですけど」

 退団発表の記者会見では、退団理由を「結婚準備です」とジョークで返した。驚かせるのが好きな龍らしい返答だったが、母から「信じる人もいる。うそはあかん」と怒られたという。「なので、結婚はしばらくしない! と書いておいてください」。笑いで取材会を締めた。どこまでも“らしさ”を発揮し、旅立ちへ向かう。【村上久美子】

 ◆ロック・ミュージカル「NOBUNAGA<信長>-下天の夢-」(作・演出=大野拓史氏) 天下統一を目前としながら、炎の中に散った織田信長の生涯をロックでつづる。信長に夢を抱き、愛し、戦った群像も交えたミュージカル。

 ◆シャイニング・ショー「Forever LOVE!!」(作・演出=藤井大介氏) 永遠に輝き続ける「愛」がテーマ。スピード感あふれる展開で、多様な「愛」の形を表現する。

 ☆龍真咲(りゅう・まさき)12月18日、大阪府生まれ。01年入団。07年、新人公演、08年バウ公演で初主演。12年4月、月組トップ。16年ぶりの生え抜き就任、21世紀初舞台生からは初のトップだった。就任後「風と共に去りぬ」でスカーレット役。大劇場では涼風真世の代表作「PUCK」で妖精を好演。フランス発「1789-バスティーユの恋人たち-」日本初演に主演した。身長171センチ。愛称「まさお」。