花組トップ明日海(あすみ)りおは、9月4日に月組・龍真咲が退団してトップ最長キャリアの「トップ・オブ・トップ」になった。100周年だった14年5月に就任し3年目。「劇団新世紀の顔」の1人が「仮面のロマネスク」「Melodia-熱く美しき旋律-」で9カ所29公演の全国ツアーに初主演している。

 おっとり、ゆっくり、不変のマイペース。穏やかなほほ笑みを携えて語る。

 「男役、芸の道は極めれば極めるほど足りない。余裕が出るほどすてきなので、心で危機感を感じながら余裕を出していきたい」

 言葉で引っ張るタイプではないが、心中には次代の担い手としての覚悟がある。昨夏は台湾公演に主演。海外からの手紙も増えた。

 「台湾公演後は、いろんな国の方からファンレターをいただきます。自分も代表として(存在して)いるので、化粧、かつら、芝居にしろ、自分が極めた物を届けないといけない」

 今作「仮面のロマネスク」は、1830年のフランス宮廷を舞台にした大人の恋愛劇。夫を亡くした侯爵夫人と恋の駆け引きを楽しむ美貌の青年貴族役だ。

 「今年は『アーネスト・イン・ラブ』『ミー&マイガール』と、イギリスが舞台のハッピー作で。今回、久しぶりに軍服も着る貴族なので、切り替えが大変」

 「仮面-」は、宝塚では97年に雪組で初演。12年に宙組で再演されている。

 「映像で見ました。最後の(官能的な)凝縮されたシーンの印象が強い。今、理想とする髪形を求めていて。神経質、なんか嫌みで、意地悪な感じにしたい。ウエーブは少なめで、でも爽やかにならないように。前髪の下ろし具合も」

 駆け引き、計算…明日海の素顔からほど遠いだけに、ビジュアルに気を使う。

 「確かに私自身は、駆け引きとか、そんな根性がない(笑い)。策略を練れない気が…。子供のころから、ねだったり、ぐずったりしたことは記憶ないですね。ダメなら我慢しちゃう」

 ただ1度だけ、親に抵抗したのが宝塚入りだった。

 「それも策を講じたのではなく、ストレートに。ただただ、泣いてお願いし続けました(笑い)。舞台には頑固ですが、入団してから芽生えたと思います」

 全国ツアーは22日の北海道公演まで続く。13、14日の静岡市民文化会館、今日15日のアクトシティ浜松と、故郷での公演は初めてだ。「静岡市民文化会館は、クラシックバレエの発表会で立ち、舞台に立つ楽しさを知った所です」と言う。舞台人としての原点でもある。

 花組を率いて3年目。就任時からの公約「花組伝統バーベキュー大会」も、6月にやっと実現させた。「(瀬戸かずやら)1期下の子が手配してくれた。シャボン玉もして、自然の中を散歩して、みんなで写真を撮り、曲をかけてエクササイズも」。組子がトップをもり立ててるのが、今の花組スタイル。“新時代トップ”は、仲間とともに充実期を進む。【村上久美子】

 ◆ミュージカル 仮面のロマネスク~ラクロ作「危険な関係」より~(脚本=柴田侑宏氏、演出=中村暁氏) 近代フランス心理小説の傑作「危険な関係」を原作とする大人の恋愛劇。舞台は、動乱最中の1830年のフランス宮廷。美貌の青年貴族ヴァルモン(明日海)と、若き未亡人メルトゥイユ侯爵夫人(花乃)の恋の駆け引きを、冷徹に、官能的に描く。97年に高嶺ふぶき、花總まりコンビで初演。12年に大空祐飛、野々すみ花で再演された。

 ◆グランド・レビュー Melodia-熱く美しき旋律-(作・演出=中村一徳氏) 愛、夢、希望、情熱、哀愁と、多様なエネルギーを表現するショー。

 ☆明日海(あすみ)りお 6月26日、静岡市生まれ。03年入団。月組配属。08年「ミー&マイガール」で新人公演初主演。11年「アリスの恋人」でバウ単独初主演。12年、龍真咲が月組トップに就くと、過去に例がない準トップ就任。「ロミオとジュリエット」「ベルサイユのばら」で、龍と主演役がわり。花組異動後の14年5月、同トップ就任。昨夏は台湾公演に主演。身長169センチ。愛称「みりお」「さゆみし」。