6年目を迎えた花組男役スター、飛龍(ひりゅう)つかさが、新人公演「邪馬台国の風」で初めてセンターに立った。祖母の代から宝塚ファンで芝居が大好き。本役のトップ明日海(あすみ)りおから繊細な役作りを学び、初主演に備えてきた。兵庫・宝塚大劇場での公演は20日に終え、東京宝塚劇場での公演が8月17日に控えている。

 聡明(そうめい)さが伝わる言葉選び。落ち着いた雰囲気。初主演の喜びは「驚きと喜び、責任感。自分に対する期待が込み上げました」と表現した。大役を得て、舞台が好きという思いを新たにした。

 「生まれた…いえ、母のおなかにいるときから、宝塚(の楽曲)を聴いていたので(笑い)。祖母が宝塚ファン、母もその影響で」

 自らは小学校低学年のとき、元花組トップ愛華(あいか)みれの映像を見てファンに。中学で身長が伸び、男役を意識した。

 「最初に男役としてセリフをしゃべったときも、ずっと見ていたので抵抗がなくて。恥ずかしい気持ちも私には、なかったです」

 宝塚音楽学校時代は「演劇」の成績が最も良かった。今作は、古代日本が舞台。両親を敵対国に殺された邪馬台国の兵士役で、主人公は相手を殺傷しない棒術の達人の設定。本公演で主演するトップ明日海の役作りをじっくりと学んだ。

 「明日海さんは、役を作っていく過程が繊細で緻密。毎回違う取り組みをされ、まったく違うキャラクターを仕上げていかれる」

 飛龍は1年目、配属前の組周り先で、月組の「ロミオとジュリエット」(12年)に出演。当時準トップに就いたばかりの明日海がトップ龍真咲と、主人公ロミオと敵役ティボルトの2役を役代わりで演じていた。

 「性格が正反対の役柄。でもその役を演じているときは、もう1つの役の面影が一切出てこない。ただただ、すごいと思いました」

 飛龍が花組に配属されると、明日海も同組に異動。明日海はまた違う人物になりきっていた。「いろいろな人生を、役を通して歩むことができる」と感じた。

 スーツの似合う「男くさい男役」が目標だ。「普段から娘役さんを愛(め)で、男役としての包容力につながれば」と話す。ひとりっ子だが、お姉さん気質。「年の離れたいとこが多く、姉御肌かも? 同期からは『先輩』って…」と笑った。

 バラエティー番組を見るのが息抜き。「あまり(仕事を)引きずらない」と、切り替える能力もある。芸名は入団時の「たつ年」から「ドラゴンに羽根がはえ昇るイメージ。字面も男らしい」として決めた。昇り龍は、頂きを目指して飛び始めた。【村上久美子】

 ◆古代ロマン「邪馬台国の風」 争いが絶えない古代日本が舞台。倭国(わこく)連合の中心となる邪馬台国は、狗奴国(くなこく)と激しく対立。幼い頃に両親を狗奴国に殺されたタケヒコは、生き抜くために戦う術を習得。狗奴の兵に襲われた娘のマナを助ける。マナは、平和な暮らしを守ろうとみこになり、大みこの位を受け「ヒミコ」を名乗って女王に就く。

 ☆飛龍(ひりゅう)つかさ 10月11日、東京都生まれ。12年に初舞台。13年2月、花組に配属。昨秋「雪華抄」新人公演では、王の役に抜てき。「初めての大きな役に空間を動かす力の大切さを学んだ」。身長171センチ。愛称「つかさ」「ヤッシャ」。