花組トップ柚香光が、相手娘役に星風まどかを迎えた新コンビで、本拠地お披露目「忠臣蔵ファンタジー『元禄バロックロック』」「The Fascination! -花組誕生100周年 そして未来へ-」に臨んでいる。芝居は忠臣蔵を軸に置いたエンタメ作。ショーでは、花組100周年を祝うパフォーマンスを披露する。兵庫・宝塚大劇場で12月13日まで。東京宝塚劇場は来年1月2日~2月6日。

トップ2年でさらに前進する柚香光
トップ2年でさらに前進する柚香光

初の花組公演から100年。記念イヤーにセンターに立つ。柚香は「身の引き締まる思い。最善を尽くし、精進したい」。最初に誕生した組で育ち、周年に際し、花組史を考えた。

「その時々のカラーがあるんですけど、品、品格とは、パフォーマンスをする中で生まれる“もてなす心”と余裕。ジェントルマンな雰囲気。宝塚の花園にお越しくださった皆様に対する包容力が、花組の礎にあるのではないかと…」

自身の思う、1世紀継がれた組のイメージは-。

「お花を連想するような『ふわっとした』温かさと品、朗らかさですね。熱いというより温かい、強いというより洗練された、派手というよりは華やかな-という雰囲気です」

芝居は、忠臣蔵を軸にしつつ斬新な展開。柚香ふんする、元赤穂藩藩士の時計職人クロノスケは、ばくちでもうけたことで、生真面目な性格が一変する。

「でも、見終わった後には、爽快感、さわやかな気持ちになってもらえるのでは…と。コメディーではないですが、作品全体に明るい空気が流れています」

クロノスケ像は「物事を前向きにとらえ、生きていく上での知的好奇心にあふれている」ととらえる。「演出の谷(貴矢)先生が『柚香さんが演じるなら』と妄想を重ねて作り出してくださった役」という。

想定外の出来事、苦難にも「ワクワクしながら立ち向かうみたいな、エネルギーに満ちあふれた爽快な人物だなと」と説明。「少年漫画の主人公にいそう」と考え、役を作っていった。

「私自身、新しいことや学びが好きで、知りたいという欲があり、想定外のことが起きるとおもしろいって思う。役と共通する面はあるなと思います」

最近、起こった想定外の出来事を問うと、予想を超えた答えが返ってきた。

「ああ! 家に小さなクモが入ってきたんですよ。このご時世、来客も少ないですし、ちょっと様子を見ていたんです。クモの巣だけはよしてくれよと思いながら。同居生活が結構長くて。同じ子なのかどうかは分からないですけど(笑い)。意外といるねえ! っていうのが予想外でした。あれ、そんなんじゃ(答えは)ダメですよね?」

自らにツッコミ、取材の場を和ませた。ショーは花組100年を祝う構成で、過去の名場面にも挑む。

「名曲や名シーンと言われるダンスナンバーも。私自身、心臓が口から出そうなくらいドキドキ。この場面を汚してはならない、格、質を、落としてはならないという意味での緊張です。同時にとても光栄で、楽しみです」と意気込む。

相手娘役に、宙組でトップ娘役を経験した星風まどかを迎え、新コンビの本拠地お披露目でもある。

「(星風は)おもしろい人です。一緒にいると、ついふざけたくなる。芸事への好奇心だとか、似た温度を感じることが多々あり、夢中になって一緒に作っていってくれる」

前作で華優希、先輩瀬戸かずやらも退団。新生花組のスタートでもある。

「ショーは下級生の1人1人までピックアップされ、新しい風は感じます。どの作品もそのメンバーでやるのは1回だけ。一期一会。課題も感じています」

歴史のバトンを受け取り、その重みも実感する。「舞台に携わる方々への敬意という根本を忘れずに舞台に立ちたい」。トップ2年。コロナ禍に見舞われ、悔しい公演休止も経験した。

「世界中でも本当にいろいろなことが…。それも含めてすべてに感謝。学びをこれだけいただけた2年間は、人生で大きなこと」

今作は、宝塚大劇場の21年最終作で、東京宝塚劇場は22年幕開け作。環境に感謝し「『雨降って地固まる』『やるぞ!』。夢中でワクワク、ドキドキ…まい進していきます」。節目1世紀のリーダーは前しか向かない。【村上久美子】

トップ2年で、相手娘役に2人目の星風まどかを迎えた花組トップ柚香光
トップ2年で、相手娘役に2人目の星風まどかを迎えた花組トップ柚香光

<月城かなととは同じ95期>

月組の新トップに就いた月城かなとは、星組トップ礼真琴とともに同じ95期。博多座公演でトップ初主演作を終えた月城とは、普段から連絡を取り合う。月城の印象は「詩的な人。心の機微に敏感で、よく見てんな~と。人間観察というか、舞台の上でも『ああ、よくわかったね』って感じたり」とほほ笑む。芝居に定評のある月城、その源の一端を柚香が明かした。

◆忠臣蔵ファンタジー「元禄バロックロック」(作・演出=谷貴矢) 国際都市のエドでは、バロック文化が隆盛を誇り、元赤穂藩藩士のまじめな時計職人クロノスケは、貧しいながらも穏やかに暮らしていた。だが、時を戻せる時計を発明したことで、人生が一変。ばくちで大もうけし、元赤穂藩家老クラノスケから、主君タクミノカミのかたき討ちへの協力依頼も乗り気になれない。だが、コウズケノスケの隠し子キラの存在を知り、動く。

◆レビュー・アニバーサリー「The Fascination! -花組誕生100周年 そして未来へ-」(作・演出=中村一徳) 1921年、初の花組公演から100年。花をテーマにしたダンスステージで、柚香が2人目相手娘役に迎えた星風まどかと、新コンビ本拠地お披露目。

☆柚香光(ゆずか・れい)3月5日、東京都生まれ。09年入団。花組配属。14年新人公演初主演。同6月宝塚バウホール初主演。15年台湾公演でオスカル。17年「はいからさんが通る」で外部初主演。19年東京で「花より男子」主演。同11月に花組トップ。今春の前作で前トップ娘役華優希が退団。2人目相手娘役に星風まどかを迎え、今夏「哀しみのコルドバ」で新コンビ初主演。身長171センチ。愛称「れい」。