雪組全国ツアー「ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-」は、7~9日の大阪・梅田芸術劇場公演でスタートする。アンドレを演じる夢乃聖夏は「オスカルの影ではなく、オスカルを照らす“太陽”でありたい」と話す。オスカルにふんする早霧せいなとは01年入団の同期で、ともに九州出身。初舞台当時、並びが隣で同じ化粧台を使っており、オスカルとアンドレ並みの絆で名作に臨む。ツアーは長野、山梨、愛知、三重、福岡、長崎を回る。

 星組から雪組へ移籍してまもなく丸2年。夢乃は、同期の早霧と「オスカル」「アンドレ」コンビで全国ツアーに出る。くしくも、2人の初舞台は「ベルサイユのばら2001」。キャリアを重ね、思い出の名作でのタッグとなった。

 「ありがたいことに早霧は同期で、音楽学校からのつきあい。初舞台の化粧前は2人で1台を使いますが、隣同士だったので同じ台を使っていました。そのころはこんな縁があるとは思ってもいなかった。学年を経ても、お互い分かり合える存在だと思いますね」

 夢乃、早霧はともに九州出身。オスカルとアンドレと言えば、双子座にたとえて「さながら(双子座の)カストルとポルックスのように、魂を近く寄せ合って…」というセリフがある。

 「この名ゼリフの場面は、お互いにすごく近く、遠慮なくぶつかり合える。うれしいですね。だからこそ、オスカルの心の中まで読み取れるように、その日の状態で(早霧と)キャッチボールできる楽しみも」

 雪組は昨年春、フェルゼン編として、本拠地公演を行っている。そのとき、夢乃はジェローデルを演じた。再演のたび、過去映像や漫画を見直すという。

 「前回はジェローデル目線で、今回はアンドレ目線で(笑い)。やっぱり、演じ手によって変わっていくので、自分らしいアンドレにしたいですね」

 早霧とのコミュニケーションも十分。ただ、早霧は役柄に全身で入り込むタイプだが、夢乃の場合は「私は楽観的で」と笑い、アプローチは違う。それゆえ、オスカルとアンドレの関係性で気づいた点もある。

 「アンドレは『オスカルの影』って言われますけど、私は、オスカルを照らす太陽でありたい。夢乃聖夏も陰より陽だと思うし、その自分らしさもちょっと出したい。もちろんアンドレは平民で、オスカルを守るのが役目ではあるんですけど。受け止めて、オスカルが安心できるようなアンドレでいて、愛の強さを明確に出せるようにしたい」

 早霧オスカルを照らす光のような、斬新なアンドレを目指す。ただ、同期で仲良しゆえの緊張感もある。

 「見つめ合って歌う場面があるんですけど、すごく近い! この間のけいこは、セリフを間違えて2人で笑いが止まらなかった。ちょっとでも間違えると、笑って大変。だから、絶対に失敗できないという、別の緊張感はありますね」

 星組にいた新人時代、現トップ柚希礼音をほうふつとさせるルックスから“柚希2世”と言われたこともあった。奔放な性格を役に反映させてきた。前作「Shall we ダンス?」では、映画では竹中直人が演じた破天荒なキャラクター、ドニーを好演した。

 「私、完全な二枚目より、三枚目の方が好き」

 今年1月、同公演の東京公演を、上方落語家の桂文枝が観劇し、夢乃の弾けた演技に感心していた。

 「ええ~! ホントに? そんな! でも、さすがに達成感はありました。師匠にアドバイスを頂けていたら、また変わったかもしれませんけど、私なりに精いっぱいやったので、悔いなし。感無量ですね」

 上方お笑い界の重鎮から喜劇センスを評価されるほど、新たな引き出しを増やした。今回は王道、名作の恋愛劇で地方を回る。

 「普段、宝塚まで足を運べないお客さまに、これが100年続いた宝塚ですよって、お伝えする。誰もが知っている作品ですし、ここで『なんだ…』って思われると、私たちだけの問題じゃない。大階段も銀橋も見てもらいたい。(宝塚大劇場に)1度、行ってみたいね、と思われるような舞台にしたいです」

 気持ちも引き締まる。今ツアーを観劇した小学生、中学生が、将来、宝塚を志し“金の卵”になるかもしれない。

 「そうなれば、ありがたい。こんな世界もあるんだ、と。あ! 全国ツアーといえば、食べ過ぎ注意です! ショーはなくて、お芝居だけで、あまり体を動かさないから、カロリー消費しないので」

 ちゃめっ気たっぷりに笑う。太陽そのものの笑顔だ。夢乃は、オスカルを照らす斬新なアンドレになりそうだ。【村上久美子】

 ◆宝塚グランドロマン「ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-」~池田理代子原作「ベルサイユのばら」より~(脚本・演出=植田紳爾氏、演出=谷正純氏) 74年に初演され、再演が重ねられる劇団代表作のひとつ。すでに、のべ観客動員は450万人を超えている。ツアーは3月7~9日、大阪・梅田芸術劇場からスタート。長野、山梨、愛知、三重、21日は福岡を回り、25~26日の長崎公演で千秋楽。

 ☆夢乃聖夏(ゆめの・せいか)7月21日、佐賀県生まれ。01年、宙組公演「ベルサイユのばら2001」で初舞台。星組に配属。長身で華やかなルックスが特長で、07年「エル・アルコン-鷹-」で新人公演に初主演。08年バウホール公演「アンナ・カレーニナ」にも主演するなど、着実に成長。11年春、九州新幹線開業PRのため、同郷の朝夏まなととともに「さがさくらジェンヌ」に任命された。12年4月、雪組へ組替え。異動後、初作品となったバウ公演「双曲線上のカルテ」でも、同期の早霧とコンビを組んだ。身長172センチ。愛称「ともみん」。