宝塚歌劇雪組の若手スター、月城かなとは兵庫・宝塚大劇場の新人公演「一夢庵風流記 前田慶次」(24日)で、新人公演に連続主演する。同作の本公演で退団するトップ壮一帆は日本物を得意としているだけに、大先輩から「和の魂」を継承。和物の雪組の伝統を受け継いでいく。東京宝塚劇場の新人公演は8月14日に行われる。

 宝塚100年。歴史の中で築かれてきた「和物の雪組」。伝統的に日本物の上演が多く、6年目の月城が伝統の継承を宣言した。

 「壮さんからは、見て学ぶことも多い。前回(公演)の心中(恋の大和路)は、壮さん自身の経験が集約されていた。所作から、日本物でこう見せるならこんなお化粧とか、貴重なお話をたくさん聞きました」

 雪組は前トップ音月桂も「JIN-仁-」で退団。現トップ壮は、前田慶次で有終を飾る。その新人公演には、前作「Shall we ダンス?」に続き連続主演が決まった。

 「初めてではないので、お客さまもシビアに見られると思っています。私、冷静に見られがちですが、心は熱いというか大胆なところがあるので、慶次に通じるところはあるかなって」

 端正な顔立ち、クールな雰囲気も魅力だが、内面は熱い。というのも、星組の礼真琴、花組の柚香光と、同期のバウ公演主演が相次ぎ、次世代を担う95期として注目されている。爽やかな笑顔の裏で対抗心を燃やす。実咲凜音(宙組)愛希れいか(月組)ら、トップ娘役も同期だ。

 「2人(礼、柚香)のポスターを街で見てもうれしいし、公演も見に行きます。自分より1歩先を走っている同期がいるのは、励みになります。オフには、ご飯に行くし、とくに柚香とはよく話し、ダメ出しも同期だから言える。口紅の色とか細かいことも」

 互いの個性、目指す道を語らい、自分だけの色を探す。その中で「和物の雪組」を極める、と決めた。

 「壮さんのそばで学んだことが、私の一番の武器。まず、新人公演をしっかりと務めて、その結果が(バウ主演へ)つながれば…」

 もともとは、舞踊経験もなく、日本史好きでもない。時代劇、演歌に夢中ということもなかった。

 「でも日本物って、自然に心に入って来て、日本人だなと実感する。楽曲もきれい。手の動きや目線などの所作で心の動きが分かって奥深い。心の中を動かしていないと、お客様に伝わらない。心と所作がぴったりと合った時は、本当に絵のようにきれいで楽しい」

 前作「心中・恋の大和路」では、念願の手代・与平を演じ、役柄に魂を込める喜びも知った。プライベートでも心がけが変わった。

 「最近、CS放送で過去の作品を見ても、舞台に取り入れようとして見ている。私、家ではオフに切り替えないと、次の行動ができないので、部屋の落ち着ける空間作りにはまっています。観葉植物を置き、照明を変え、アロマ(芳香を放つ精油)を取り入れて…」

 くつろげる香りにこだわり「優しい香りが好き」と話す。食事も和食派だ。

 「人から『体に良さそうな物、好きだよね』って言われるんですけど、体にいいと思ったら、何でもおいしく食べられる。ゴーヤーも青汁も、セロリも!」

 モットーを聞くと「人に優しく、自分に厳しく」と返ってきた。「悩みは人に言わない。弱みを見せたくない。自分の問題は自分で処理したい。ちょっと前田慶次みたいかな、あはは」。優しい顔立ちに輝く瞳。意志の強さがしっかりと宿っている。【村上久美子】

 ☆月城(つきしろ)かなと 12月31日、神奈川生まれ。田園調布学園高等部を経て、09年宙組「Amour それは…」で初舞台。雪組配属。13年2月の中日劇場、同8~9月の全国ツアーで「若き日の唄は忘れじ」、今年3~4月には「心中・恋の大和路」に出演。新人公演は、昨年11月「Shall we ダンス?」で初主演。身長172センチ。愛称「れいこ」。