宙組男役スター愛月ひかるが、新人公演を卒業した節目の8年目でバウ公演に初主演する。宗教戦争を終息させた仏国王、アンリ4世を描いた「バウ・ゴシック SANCTUARY(サンクチュアリ)」(6~16日、兵庫・宝塚バウホール)。オフを利用し、初めての仏旅行でアンリ4世の足跡をたどり、仏王家の紋章である「ユリの紋章」を身近に置いた。

 2歳の時、母の膝の上で初感激して以来「宝塚愛」は揺るぎない。

 「私、宝塚にしか興味がないので、息抜きも、ファン時代から持っている宝塚のビデオを見ることです。CS(放送=宝塚専門チャンネル)にも入っているので、休みの日は一日中見てしまい、同じ(宝塚)ニュースを3回見ることもあります(笑い)」

 今年4月で、新人公演(7年目まで)を卒業した。男役にとって最も難しい時期に、やっとバウ初主演がまわってきた。

 「他組では私より2期下でも(バウ主演を)しているので、正直、驚きはなかったです。むしろ、決意の方が大きかった」

 今作は16世紀、カトリックとプロテスタントの宗教戦争最中、フランスが舞台。争いを終結させたアンリ4世の即位までを描き、アレクサンドル・デュマの小説「王妃マルゴ」で知られる妻との愛も軸になる。

 「映画(王妃マルゴ)も見ましたし、時代観をと思って、アンリ4世の本も読みました」

 本公演のお手本がある新人公演では主演経験も豊富だが、オリジナル作品の主演は初。「自分で作り上げていく過程がおもしろい」と、オフを利用して、初めての仏旅行にも行った。

 「アンリ4世のお墓に行ってみたくて…。結婚式を挙げた聖堂とか、ゆかりの場所をまわって。それに(仏王家の)ユリの紋章(関連グッズ)もいろいろ買いました。行ってよかった。イメージもわきました」

 愛月はアンリ4世を「フランスでは人気のある国王で、部下を思いやる温かい、情が厚い人」と、とらえる。後輩が増えてきた自分の環境を考え「近い人とふれあうとき、そうありたい」と触発され、初めて“座長”の立場を味わっている。

 「(主演の)私が悩んだらだめ。私が絶対的な自信をもってやらないことには、みんな、ついてこられない。休憩中にはみんなに声をかけて一緒にご飯を食べています。お稽古がどんなにしんどくても、やっぱりご飯を食べると、みんな笑顔になりますから」

 同じ釜の飯で、結束力を高める。一方で、健康維持にも余念がない。

 「のどが弱くて、朝、晩の(吸入器など)ケアは欠かせません。夏でも絶対に、ぬれマスクをして寝ています。朝食はお米派なので、おかずは買ったものでも、朝のおみそ汁だけは作ります。具材は塩抜きしたアサリや豆腐、エノキ、キャベツ、大根などですね」

 こだわると徹底的に貫くタイプ。以前、料理に凝った時期は…。

 「私それこそマジメなので、大さじとか、キッチリしないと目分量では無理。我流ではなくて、手順、分量も本に書いてある通りにやらないと!(笑い)」

 自他ともに認める「マジメ」「いちず」な性格は、新人から主力への過渡期で得た好機にこそ生きる。【村上久美子】

 ◆「バウ・ゴシック SANCTUARY(サンクチュアリ)」(作・演出=田渕大輔氏) 16世紀のヴァロア王朝下のフランスが舞台。小国ナヴァールの王子アンリが、カトリックとプロテスタントによる宗教戦争を終息させ、仏国王アンリ4世として即位するまでの物語。アレクサンドル・デュマの小説で知られる妻マルゴ(伶美うらら)との愛や、政権下に渦巻く人間ドラマを描く。

 ☆愛月(あいづき)ひかる 8月23日、千葉県生まれ。07年「シークレット・ハンター」で初舞台。宙組に配属。10年「誰がために鐘は鳴る」で新人公演初主演。以来、新人には4回主演。今春、新人を卒業し、5月「ベルサイユのばら-オスカル編」では衛兵隊のアルマンを演じ、りりしい軍服姿を披露。同期は彩風咲奈、元雪組トップ娘役舞羽美海ら。身長173センチ。愛称「あい」。