ロンドンブーツ1号2号の田村淳に、日刊スポーツの記者が取材する連載「ロンブー淳の崖っぷちタイトロープ」。今回、インターネットについて聞いていくと、淳は「2016年の変化がいよいよ楽しみだ」と話します。


 インターネットは、失敗が許される場所だと思うんです。だから、いろいろ挑戦できる。今まで、ツイッターとかでたくさんイベントを企画してきたけれど、失敗という失敗がないんですよ。どれも、おもしろい結果がついてくる。

 例えば、「多摩川沿いを下りながら、ごみ拾い運動をしよう」っていう企画で、当時話題になっていた「ゴマちゃん」のコスプレしてきてくれ、って言ってやったことがありました。みんな、ゴマちゃんっぽいかぶり物とかをして来てくれたんです。すると不思議とゴマちゃん目線で川の様子を見るようになる。そうしてゴミを拾っているうちに、参加者からは「ゴマちゃんとかはもうどうでもよくなって、単純に汚れているなって思いました」って、川の汚れの話になったりするんです。

 単純に「ゴミ拾いに行こうぜ」って言うだけよりも、ゴマちゃんのコスプレっていうワンフックをつけていくことによって、みんな来やすくなる。「なんなんだろう、やったことないけどやってみよう」って思うような、ひとつ負荷をかけることが大事なのかなと思います。

 シャープさんが経営不振に陥った時に、シャープさんへの思いを原稿用紙に書いてきて、作文を発表しよう、というのもやってみたことがあったんです。思っていたより、感動的でしたよ。ある人は「私がものごころついた時には家にテレビっていうものがあって、うちの家のテレビはずっとシャープでした。お父さんに聞いたら『シャープ以外の製品には興味ない』って言われました。ずっと、シャープ製品のテレビを見ながら育ちました。シャープさん、ありがとう。だから、なくならないでほしい」みたいな…。感動的ですよね(笑い)。そのときに集まったのは、20人くらい。ひとりひとりが読み上げました。楽しかったですね。

 インターネットだから、失敗してもいい、って思っているから、なんでもできる。だから“失敗”ということがない。テレビで同じことをやれって言われたら、いろいろこねくり回して、結果安全パイというか…、面白くなくなってしまうこともあると思うんですよね。

 「LINE LIVE」の生配信とかも、失敗してもいいって思ってやっているから、失敗しないんですよ。ボクが夜道を歩いていく。それをずっと生配信している。曲がり角にきたら、見ている人に「右か左か」って聞く。左って言う人が多かったら左へ歩いていって、その先で出会った人に話を聞く、みたいなことをやって、100万人とかが見てくれる。予定調和じゃないから面白いんですよ。

 ネットの世界は、拡散力がある分、芸能人が街中で写真を撮られて、ツイッターとかで広がっていったりするのが問題になっていたりもしますよね。個人的には、それは仕方がないと思っています。芸能人にもプライバシーがあるんだぞ、って言ったところで、結局止められないですから。ボクだって、街中に出たら、やっぱりバシャバシャ写真を撮られるわけで。それを「やめて、やめて、」って止めること自体が、もう今は感覚的に古いなと思っています。ただ、その代わり芸能人は、ただ街中を歩くときも常にオン状態じゃないとダメですよね。隠れ家的バーみたいなところに行く時ですら、いつ撮られても大丈夫な状態でいないといけない。

 ボクは、街を歩くときは常にオンですよ(笑い)。どうしてもオフになりたい時は、すごく変なお面を被ります。あれを被ってたら「変なやつが来た!」みたいになって、怖がられるんですよ。いつも車に、いろんな種類のお面を積んでます(笑い)。人混みを歩くときに、どうしても気づかれたくない時は、そのお面を着けて歩くんです。まあ、まずボクだとは思われないですよね。みんなにも勧めたいんですけど、みんながやり出すと気づかれそう…獣神サンダーライガーさんの仮面とか、すげえいいと思うんですよね。近づきにくいでしょ。

 写真を撮られたり、アイドルの過去の写真が流出したり…。ダメだ、ダメだ、って言っても、出るものは出てしまう。まあ、長崎に行ったって、撮られる時は撮られるわけですからね(笑い)。長崎だから、気が緩んでいた部分もあると思うんですけど。撮る側にモラルを求めても、止められないものは止められない。そういえば、マイケル・ジャクソンがやり始めたんですよね。子どもにお面を着けるやつ。すげえ頭いいと思いました。だから、子どもが生まれたら、お面被らせますよ(笑い)。

 2016年は、いよいよ、テレビがネットにおびえ始める時代が来るんじゃないかと思っています。

 今までは、何か言っても、まだテレビの方がすごいよって思っていたんですけど、最近はこっちの方が多くの人数が見ているんじゃないかって気持ちになりつつある。だから、スポンサーさんは、いよいよどちらに付くべきか、考えてもいいと思うんですよ。

淳はネット用に自分の番組を発信するために防音設備の整った専属スタジオを作っている
淳はネット用に自分の番組を発信するために防音設備の整った専属スタジオを作っている

 例えば、ボクの「LINE LIVE」の配信を100万人が見ていたとして、テレビを見ている100万人と、どっちが購買意欲があるかというと…、どうなるかですよね。一概には言えないですが…よりアクティブで、購買意欲があるかということを考えると、おじいちゃんやおばあちゃんも見ているテレビの100万人よりも、若い人が見ている100万人に企業は価値を見いだすべきだと思うんですよ。今のテレビって、おじいちゃんおばあちゃんに向けて作られてるっぽい番組にも若い人向けの商品のCMを流したりするじゃないですか。例えば、若い人向けのチョコレートのCMならば、確実に若い人が見ている100万人のところに流した方がいいですもんね。

 もちろん、それぞれの環境でみんないろいろと考えているんでしょうけれど、まだ行動には移していないですよね。2016年、広告代理店の方がどう動くのかにも、とても興味がありますね。


※連載「ロンブー淳の崖っぷちタイトロープ」は、日刊スポーツの各分野の記者がさまざまなテーマで取材し、率直に話して貰う企画です。今回は「インターネット」について、文化社会部の横山慧が取材しました。

(ニッカンスポーツ・コム連載「ロンブー淳の崖っぷちタイトロープ」)