ロンドンブーツ1号2号の田村淳に、日刊スポーツの記者が取材する連載「ロンブー淳の崖っぷちタイトロープ」。今回は、日ごろAKB48グループを取材している担当記者が、AKB48の10周年について、共演も多い淳に聞いてみました。


 AKB48と初めて一緒に仕事をしたのは、8年前か9年前かなぁ。深夜のテレビ番組だったと思うんですけど、ほとんど印象に残っていないんですよ。AKB48っていう存在はなんとなく聞いていたけれど、名前も顔も知らない状態でした。正直に言うと、その時は「また出ては消えていく人たちか…」っていう風に思っていましたね(笑い)。


田村淳(中央)は番組の司会で、AKB48と共演することも多い。AKB48のメンバーは、左から小嶋陽菜、渡辺麻友、1人おいて高橋みなみ、大島優子(2012年12月7日、撮影日刊スポーツ)
田村淳(中央)は番組の司会で、AKB48と共演することも多い。AKB48のメンバーは、左から小嶋陽菜、渡辺麻友、1人おいて高橋みなみ、大島優子(2012年12月7日、撮影日刊スポーツ)

 ボクが、「AKB48ってすごい」と思い始めたきっかけって、楽曲なんです。「言い訳Maybe」ってシングルを聞いて、めっちゃいい曲だと思って、後輩に「誰の歌?」って聞いたら「AKBだと思いますよ」って。「へえ~!AKBなんだ、楽曲いいんだな~!ほかのも聞いてみよう」って感じでした。


 当時、一緒に番組をやっていた日テレのプロデューサーに聞いたら、「AKB48のファンが選んだランキング形式の、『AKB48リクエストアワーセットリストベスト100』ってライブがあるよ」って教えてもらって、そのDVDを見たんですよ。

そうしたらもう、これはすげえ!って。思っていたアイドルグループ像と全く違っていました。大勢集めた“人海戦術”には変わりないんですけど、新しい宝塚を見ているような気がしたんですよね…。

 ボクは東京に出てきたばっかりのころ、友達もいなくて、どうやったら女の子に会えるか考えて、ファンが女の子ばかりというので日比谷の宝塚劇場に通っていたことがあるんです(笑い)。通っているうちに宝塚のショーって、人数が多くて、華やかで、すごいなと思うようになって。


 そんな感じで、AKB48は、言ってみれば「ネオ宝塚」みたいな感じに見えたんです。お客さんも一緒になって作る、そういうライブを初めて見た気がしたんですよね。


 ああ、この曲いいなぁって感動したのが、「初日」。「初日」を聞いて、すごく聴く人の心を揺さぶりにかかっている曲だなと思いました。実際に苦労して花開く、みたいなのは、彼女たちが体現しているじゃないですか。それに、それを支えて、大きくしたファンがいるっていう構図。現代アイドルの中で一番しっくりくるアイドルの形を、秋元康さんが模索しながら作っていったんだなと思います。


 その後、「なるほど!ハイスクール」とか、「ガチガセ」とかで共演するようになって、だんだん主要メンバーの顔と名前が分かるようになりました。でも、人が好きって言うよりは、楽曲とか、グループを作り上げていく過程とかが好きなんですよね。


テレビ「なるほどハイスクール」制作発表会見でガッツポーズを見せる、左から田村淳、柏木由紀、高橋みなみ、篠田麻里子、前田敦子、小嶋陽菜、大島優子(2011年3月28日、撮影日刊スポーツ)
テレビ「なるほどハイスクール」制作発表会見でガッツポーズを見せる、左から田村淳、柏木由紀、高橋みなみ、篠田麻里子、前田敦子、小嶋陽菜、大島優子(2011年3月28日、撮影日刊スポーツ)


 バラエティーで彼女たちと共演してたときに思ったのは、もっといろんな子に話を振りたかったなってこと。目立つ人は放っておいても目立つから、ボクがおもしろいと思った子をもっと掘り下げたいなぁと。でも、やっぱり、テレビは視聴者が知っている人をしゃべらせたいですから、なかなかテレビ的に難しいところもあるんですよね…。


 それで言うと新しい総監督の横山由依は、ボクは表情を見ていたり、気にしている存在でした。AKB48と一緒に番組をやっていた時、横山は引っ込み思案なところはあったんですけど、おもしろい子だなと思っていたんです。「ほわん」としていて、だけどなんか芯があって、コメントすることは短い言葉だけど、すごい考えて吐き出している感じがして。ただ、不器用そうだなと思いました。ボクはイジるならこういう子の方が好きなんですよ。

 最近会ったら、全然雰囲気が変わっていましたよ。前はあれだけ内向的だったのに、目の力がすごく強くなっていて、グループを引っ張っていくんだ、っていう意思が全身からあふれていました。もともと、芯は強い子なんでしょうね。

 高橋みなみの引っ張り方だけがリーダー論ではないと思うんです。たかみなは、たかみなで、グループを率いるために自分で導き出したリーダー論なんでしょうけど、これからはせっかくリーダーが変わるんだから、横山が良い意味でAKBを変えてくれた方がおもしろいなと思います。


 それにしても、10周年ですか…!ピークが過ぎたって言う人もいるみたいですけど、もっと早く終わってもいいようなブームだったのが(笑い)、これだけ続くっていうのはすごいですよね。「安定飛行」に入って、ずっと続いていくグループに、文化になっている気がします。もちろん指標としては売上とかの数字は大事なんだろうけど、AKB48はそんなこととは関係ないような文化を作っているから、このまま、あの劇場とともにあり続けるんじゃないかなと思います。


 それは本人たちが望むことなのか、秋元さんが望むことなのか、ファンが望むことなのかは分からないですけど。ボクはそのトライアングルの外にいる人間なので勝手に言いますけど…、長く続く文化として、日本のアイドル代表として、当たり前のようにいてほしいと思います。



※連載「ロンブー淳の崖っぷちタイトロープ」は、日刊スポーツの各分野の記者がさまざまなテーマで取材し、率直に話して貰う企画です。今回は「AKB48の10周年」について、AKB48グループ担当の横山慧が取材しました。


(ニッカンスポーツ・コム連載「ロンブー淳の崖っぷちタイトロープ」)