来年創立65周年を迎える劇団四季の記念公演「ソング&ダンス65」(東京・自由劇場)で語られたメッセージです。歴代の劇団員たちが受け継いできた合言葉であり、圧倒的な歌とダンスで、その意味を体現してくれました。

 「ソング&ダンス」は四季が数年ごとに開催している人気コンテンツで、「キャッツ」「ライオンキング」「美女と野獣」「オペラ座の怪人」など、四季の大ヒットミュージカルを歌とダンスでイッキ見できるショーです。第9弾となる今回は、総勢34人、40曲を超えるナンバーが披露されました。

 「ウエストサイド物語」の「サムホエア」でしっとりと始まったかと思ったら、5曲目には「ライオンキング」の「彼はお前の中に生きている」。ニューヨークあり、アフリカのサバンナありというカラフルさですが、どちらも命や生き方に意志を示す力強い曲。こんな異色メドレーができるのもこのショーの楽しいところです。「ウエストサイド物語」と「パリのアメリカ人」の2作から「アメリカ」→「パリのアメリカ人」→「パリ野郎」としりとりみたいな3連発もありました。

 有名な曲が次々と出てきて単純に楽しいし、王道のダンス、高揚感がすさまじい群舞のほか、可動式の鏡を使ったマジック的な演出、どれだけ練習したんだと笑ってしまう隠し芸まで見せ方もいろいろ。客の拍手があれば何でも成し遂げられる演劇人の情熱がステージの隅々にあふれていて、見ているだけでハッピーなんですよね。

 個人的には、派手とハッピーの極みみたいなナンバー「理想の相棒~フレンド・ライク・ミー~」(アラジン)が好きなので、魔人ジーニー役の瀧山久志さんが歌ってくれて感激。と思ったら「オペラ座の怪人」のファントムでも出てきて、「ソング&ダンス」ならではのお得感。「ノートルダムの鐘」のようなダークで重い世界観の作品であっても、根底にあるのは自力で道を切り開いていく勇気と冒険であり、「人生は生きるに値する」と、帰り道を顔を上げて歩きたくなる余韻があるのです。

 1953年、慶大と東大を中心とする学生10人で旗揚げされた劇団四季。今年5月には創立メンバーの1人、日下武史さんが亡くなり、あらためて65年の重みがしみじみ。演出を手掛けた加藤敬二さんは「65年の歩みと、これからの未来をコンセプトにした」そうです。どの顔も、先輩たちから受け継いだ実力とプライドがにじんでいて、声と体でできるあらゆる表現で圧倒してくれました。

 都内では、歌とダンスで活動を振り返るミュージカルがもうひとつ開幕しました。A.B.C-Zの3年ぶりの再々演「ジャニーズ伝説2017」(日生劇場)で、こちらはジャニーズ事務所55年の歴史を創立グループ「ジャニーズ」の結成(62年)から振り返っています。

 初代ジャニーズの栄光とほろ苦い青春がその後の事務所にとってどれだけ大きな遺産となったかが感動的に描かれていて、彼らの後に続いたフォーリーブスからジャニーズWESTまで21組のヒットメドレーがド迫力なこと。マッチ、少年隊、シブがき隊、光GENJI、SMAPあたり、懐かしくて涙が出そう。先輩たちのヒット曲を歌うA.B.C-Zら若手出演者たちも誇らしげでした。

 ヒット動画ひとつで誰でもスターになれる新時代は夢があっていいけれど、歴史や遺産がなければ表現できない厚みというものがあるのも事実。後輩たちの初日を2階席から見守り、盛大な拍手に送られて劇場を後にした初代ジャニーズ、あおい輝彦さんのかっこよさを見た実感です。

 「ソング&ダンス65」東京公演は自由劇場で11月26日まで。「ジャニーズ伝説2017」は日生劇場で10月28日まで。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「B面★梅ちゃんねる」)