豊洲市場に関するニュースで、日本テレビ「news zero」の有働由美子キャスターと、テレビ朝日「報道ステーション」の富川悠太アナウンサーが、ともに小型運搬車「ターレ」を間違えてアナウンスした一幕での言葉です。旬なニュースワードを看板キャスターが2人同時に間違えるという珍現象でした。

有働さんは、豊洲開場を数時間後に控えた10日の放送。中継映像に映るターレを見て「ターリーという…、ターレー? 大変失礼しました」と、ついに「ターレ」が出ないまま。「初競り」を「初売り」とアナウンスして言い直すおまけつきでした。富川アナは、翌11日の放送。豊洲市場の問題点について「2つ目の課題はターラ」と語り、徳永有美アナに「ターレ」とフォローされていました。

NHKから転身した有働さんの「zero」と、徳永アナの13年ぶりキャスター復帰で話題の「報ステ」は民放10月改編の目玉ですが、今のところどちらもふわふわしたミスを連発していて、らしくない船出という印象です。

富川アナは、改編初日の1日の放送で、自民党の小泉進次郎議員を「小泉純一郎」と言い間違えるまさかのミス。瞬時に気付いたところに徳永アナから「進次郎さん」と笑顔でフォローされ、「えっと、進次郎さん」と大慌てでした。うまくごまかせたようにも見えましたが、さすがにSNS上は「笑って済むミスか」などとツッコミ多数でした。

有働アナも5日の放送で固有名詞のミス。ゲストの俳優大泉洋さんが所属する演劇ユニットを誤って「ナック」と紹介。本人から「ナックスです」と苦笑いされ、「まだ緊張しております」と恐縮しきりでした。

3連休最終日だった8日は、曜日感覚を失ったオープニングトークを櫻井翔キャスターに振り、絶妙にフォローしてもらうヒヤヒヤな展開。新メンバーに加入した日本テレビ富田徹解説委員の紹介をすっ飛ばし、翌日に「きのうご紹介するのを失念しました。レギュラー解説者の富田さんです」と仕切り直し。1日遅れであいさつする場を得た富田さんも苦笑いでした。別の日は、ベストセラー作家として出演したお笑いタレントの矢部太郎さんから「緊張してます。余裕zeroです!」と盛大にボケられてフリーズ。「いろんな、め、め、視点から」と、肝が冷える日々です。

改編早々のミスが目立つのは、両番組がバラエティー色を強めているせいだと感じます。報道番組というより、ゲストや本人たちによるトーク路線にシフトしており、盛り上げる使命感で頭がいっぱいに見えるのです。

「zero」は俳優やタレントをゲストに招くことも多いです。ひとつのニュースをスタジオで語り合う時間も長く、1人で回す有働さんの負担は大変なものがあります。有働さんは、イノッチや池上彰さん、紅白歌合戦の白組司会者など、隣にツッコミ役がいて輝く人。「自動ドアに激突してたんこぶができた」と前髪を上げた自虐トークに、本気で心配した共演者たちが引きつって黙り込み、ペースがつかみにくそう。視聴者層も座組みも違う夜のニュースで「あさイチ」をやるより、NHK仕込みのアナウンス力を生かした正統派路線をベースに“らしさ”を発揮してほしいとも思うのです。

バラエティー化という意味では、報ステもかなりの急ハンドル。徳永アナと富川アナが仲が良すぎるのか、盛り上がって2人同時にしゃべったり譲り合ったり。スポーツコーナーもアナ同士のトークの分量が大幅に増え、スタジオに笑顔が絶えません。初日はご当地ナンバープレートの話題で突っ込み合い、「このように楽しくニュースを伝えていきます」。ダジャレにも積極的で、みんなで「紅葉(こうよう)を見に行こうよう」「ユウタが言うたった」と盛り上がる日も。「おあとがよろしいようで」と、すごいイメチェンぶりです。

夜のニュースは1日の出来事を中身充実で伝えてくれればOKだと思っているので、バラエティー化の流れにどう折り合いをつけたらいいのか、こちらにも対応力とスキルが必要なようです。まだ途方に暮れている段階で、送り手以上にふわふわしています。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)