4月期の春ドラマが出そろった。SMAP木村拓哉のテレ朝連ドラ初登場、堺雅人が日テレ水曜10時枠初登場など話題も多いが、視聴率的には2週目以降15%を超える作品がなくなってしまった。精神科医が登場する“心のケア”系の作品が多いのも特徴だが、全体的に元気に欠ける印象で、珍しく満点はなかった。「勝手にドラマ評」第22弾。単なるドラマおたくの立場から、今回も勝手な好みであれこれ言い、勝手な好みで★をつけてみた。(シリーズものは除く)

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【月曜】

◆「ようこそ、わが家へ」(フジテレビ、月曜9時)相葉雅紀/沢尻エリカ

★★★

 「半沢直樹」「花咲舞が黙ってない」などの大ヒットを連発する池井戸潤氏原作が月9に初登場。電車でのマナー違反を注意した日から、穏やかな家庭が何者かのストーカー被害に。原作は父親の話だが、主人公を息子に変えて、恐怖の日々と犯人捜し。ドラマが原作と同じである必要はないけれど、息子を主人公にした以上、もっと存在感を出す工夫はなかったかと残念。原作にない女性編集者(沢尻エリカ)を相手役に登場させたものの、嫌がらせの現状を語り合ったり、一緒に監視カメラをつけたりするだけではサスペンスを引っ張れない。父親が勤務する「ナカノ電子部品」の権力闘争が、銀行・経理の池井戸カラーでさすがの緊迫感を放っており、超えられない原作の壁。相葉君は普通の青年を演じられる貴重な俳優だと思うので、彼周辺の人間関係も含め、素人探偵手法で核心にぐいぐい迫ってほしい。

【火曜】

◆「マザー・ゲーム~彼女たちの階級~」(TBS、火曜10時)木村文乃 ほか

★★★

 セレブ幼稚園を舞台にしたママ友地獄の実態と、めげない新参者の庶民ママのバトル。好みじゃないテーマである上、杏が主演した「名前をなくした女神」と内容がほぼ一緒。生まれながらの上流階級ママ、貧乏を隠しているママなど、敵キャラ4人の設定も同じで、どちらも2話のキーマンが安達祐実。悩みと吹っ切り方の幅に人間味がにじんだ杏と違い、こちらの主人公は脊髄反射で正義感をふりかざすタイプで、「子供はお母さんの笑顔を見るのが幸せなんです」みたいな無個性なセリフの数々もちょっと苦手。ただならぬ美と貫禄の檀れい、底意地の悪さが素晴らしい長谷川京子など、敵キャラの闇の方が魅力的で、幸せな場所から正義を語る主人公は好きになれない。連ドラ初主演の木村文乃さんだけれど、脇の方が抜群に光る人だと思う。

◆「戦う!書店ガール」(フジテレビ、火曜10時)渡辺麻友/稲森いずみ

★★★★

 頑張る人たちのキラキラしたドラマは大好き。経営難の書店に配属されたお嬢さまが巻き起こす、無自覚な現場改革。本を手にした時のまゆゆの夢いっぱいの表情。なぜ本が好きなのか。思いと素直さが開始5分で伝わり、すぐこの主人公のファンになった。手堅すぎる売り場に「この店、変えちゃいましょう!」。KYな新人に初日からぐいぐい来られたら普通はウザそうだが、正論というメルヘンをまゆゆがうまく演じていて、悩んだり喜んだりがまぶしい。迎え撃つ、たたき上げの副店長稲森いずみもすてき。価値観とアプローチが対極なだけで、どちらの言い分にも一理ある職場ドラマの醍醐味(だいごみ)。ポップ広告の是非をめぐる人間模様を描いた1話は染みた。2話以降、よくある恋愛模様になってしまったが、こんな新人に振り回されたいし、この副店長と飲みに行きたい。で、こんな書店で働きたい。

【水曜】

◆「Dr.倫太郎」(日本テレビ、水曜10時)堺雅人/蒼井優

★★

 引く手あまたの堺雅人を日テレ水ドラ枠が初ゲット。天才精神科医が落ちる禁断の恋。パッケージは派手だが、開けてみたらそうでもなかった。「頑張らないでください」「よく頑張りましたね」。自己啓発セミナーレベルのせりふを、医療の奇跡のように描く精神構造の方がドラマより気になる。1話は、患者役のハリセンボン近藤春菜が1人で支えていた。主人公は今後、心を病んだ芸者のペースにはまって自らも心を崩していく流れと思われる。芸者が抱えた不幸がよくある話で、展開に意外性がないのではと、見ているこちらが勝手に悲観。わざわざの芸者設定で、地獄墜ちを文学か何かのようにコーティングしている気配も苦手。同じジャンルを笑い飛ばしている裏の「心がポキッとね」を先に見てしまった私が悪いのかも。頑張らずに脱落。

◆「心がポキッとね」(フジテレビ、水曜10時)阿部サダヲ/水原希子/藤木直人/山口智子

★★★

 日テレとフジで毎回企画がかぶる水曜10時枠。今回は“心が折れる”系でネタかぶり。テイストは正反対で、大学病院の天才精神科医を描くあちらと違い、こちらは病んでる4人の共同生活コメディー。対人恐怖症、元ストーカー、リア充強迫症、病的能天気。悪夢の四重奏を、機関銃のようなせりふの応酬で笑わせる岡田恵和ワールド。倫太郎先生みたいに「頑張らなくていいんですよ」とか言うタイプの人を完全にちゃかしている作風がツボ。「あなたの心、受け止めます」。山西惇が演じるカウンセラーは、それっぽい笑顔で患者の話を「受け止める」だけというのもいい。阿部サダヲ以外、自分が病んでいる自覚がないが、どう考えても阿部サダヲが一番まとも。全員、倫太郎先生に診てもらえばいいと思う。

【木曜】

◆「ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~」(TBS、木曜9時)大島優子/北村一輝

★★★

 暴力団からの足抜け希望者を手助けをする、警視庁「足抜けコール」の警察官。着眼点は面白いし、暴力団の足抜け手順もなるほど感が漂うが、ヒロインのキャラ設定が安っぽくて魂が宿らない感じ。「影を背負っていますよ」と分かりやすく顔半分を隠す髪形や、アップの連発など、演技力のない人をサポートする演出テクが山盛りで、そんな扱いの中でどや顔をキメている大島優子が気の毒に見える。何をしゃべっているのか少々聞き取りにくいので、音声さんにもサポートしてほしい。変人男女のバディもの、貼り紙ギャグなど堤幸彦ワールドの定石はあるけれど、堤ファンから見ても今回はいろいろすべっている印象。視聴率も6%台に。どんな作品でも必ず結果を出す勝地涼。最近いい人の役が多い遠藤憲一だが、組長役はやっぱり抜群。

◆「アイムホーム」(テレビ朝日、木曜9時)木村拓哉/上戸彩

★★★★

 爆発事故で過去5年の記憶を失い、後遺症で妻子の顔が仮面をかぶったように見えるようになった証券マンが、手元に残った10本の鍵を手掛かりに、空白の5年をたどっていく。フジやTBSが作ってきたキムタク像と違い、普通のサラリーマンというテレ朝のキムタクが新鮮。再婚して子供がいる記憶がなく、愛情があるのかも分からない男の途方に暮れ方が手に取るように分かるし、「イチゴ好きだろう」「大っ嫌い」「そうなの?」みたいなやりとりも笑える。鍵とともに開いていく過去の人間関係と、自分自身のサイテー人間エピソード。今の家族のぎこちなさや、前の家族との幸せそうな写真などの謎もいい。めげないキムタクの前向きさがきちんと物語を引っ張ってくれるので、「アイムホーム=ただいま」の行方をともにたどりたい。

◆「医師たちの恋愛事情」(フジテレビ、木曜10時)斎藤工/石田ゆり子

★★★

 「医者だって恋をする」「命を救う人間が恋に落ちてはいけませんか」。誰も否定していないところにテーマを置くユーモアで、「昼顔」に続く発情ドラマ第2弾。エロい触診、壁ドン応用編、ヌード女性のオープニング。「昼顔」斎藤工のセクシー路線でもう1度数字をとりたいという衝動だけがあって、言いたいことはあまりなさげな展開。「昼顔」の余熱にいつまでもしがみつく放送局事情に、この路線ばかり期待される斎藤工もしんどいと思われるが、しっかりこなしていて偉い。「10年に1度の逸材と言われてはや10年」とか言いながら舞台でよろけた味を出していた個性派でもあるので、今後いろんな役が来ることを期待。1話のラストシーンは、絶好の桜吹雪がセクシーだった。

【金曜】

◆「アルジャーノンに花束を」(TBS、金曜10時)山下智久/栗山千明

★★

 評価の定まった古典をピックアップする野島伸司氏の手法と、巻き添えという感じの山ピー。遺伝子工学や再生医療が現実になり、こんな手術もあながち絵空事ではない時代にアルジャーノンというのも悪くないけれど、私が知っているこの本の面白さとはだいぶ違った。

◆「天使と悪魔~未解決事件匿名交渉課~」(テレビ朝日、金曜11時15分)剛力彩芽/渡部篤郎

★★

 人を疑わない「天使」の女性警察官蒔田ヒカリと、誰も信じない「悪魔」の弁護士茶島龍之介の異色バディーが、未解決事件を再調査。司法取引をテーマにした挑戦に期待していたけれど、シナリオとキャスティングに無理がありすぎでは。ヒカリの存在が、いてもいなくてもいいのが明らか。人を疑わないピュアさが事件解決の糸口になるならまだしも、すべてお見通しの茶島の周りで「あなたは間違っています!」「なんで人を疑うんですか」と薄い糾弾をしているだけで、1時間出ずっぱりだとうっとうしい。極悪人がのうのうと生きていく司法取引の後味の悪さは新しい視点だが、事件の魅力がいまひとつで、「実は病んでました」とか、謎解きもしょぼい。渡部篤郎がダークに立ち回る「茶島龍之介シリーズ」でいいのでは。

【土曜】

◆「ドS刑事」(日本テレビ、土曜9時)多部未華子/大倉忠義

★★★

 タイトルのインパクトは「スケバン刑事」以来。悪人をいたぶりたいから刑事になったドS美女、黒井マヤの超個性的捜査。さすがに原作小説の不謹慎なドSぶりや事件の結末はテレビでは自粛しているけれど、ポリスコメディーの雰囲気はうまくアレンジ。キュートな多部ちゃんが、言葉攻めで立てこもり犯のプライドをズタズタにして「え?もう限界?」のギャップ萌え。黒いメークとファッションも似合っている。人のいいイケメン同僚をアゴで使い「とんだ役立たずね」「バッカじゃないの」。多部未華子&演出中島悟なら「デカワンコ」の方が個人的には好み。事件を簡略化しているせいか、先の読める展開。ひたすら多部ちゃんのドSぶりに焦点を合わせて見ると楽しい。

【日曜】

◆「ワイルド・ヒーローズ」(日本テレビ、日曜10時半)TAKAHIRO/青柳翔 ほか

★★★

 記憶喪失の少女を悪党から救うため、友情で結ばれた伝説の元ヤンキー7人が奮闘。不良マンガの10年後、のテイスト。「心の闇」ばかり描きたがる今期のドラマ界を思えば、この手のケンカ&ギャグの世界観も歓迎だが、30男がそろいのツナギ着て「風愛友(フーアーユー)」はかなりしんどい。「男性層に向け、月曜への弾みになるドラマを」と新設されたドラマ枠だが、同じ男性層でもヤンキー層向けだったとは。10年けじめを通したTAKAHIROと、思慮深い青柳翔の元ヤン痛快劇なら傑作になり得たかもしれないが、登場人物が多すぎて、二言目には胸ぐらをつかんですごむワンパターンに陥りがち。けんかに勝つより、やっと医療機器がひとつ売れた時のTAKAHIROの涙の方が何倍も共感できたし、月曜への励みになった。

◆「天皇の料理番」(TBS、日曜9時)佐藤健/黒木華 ほか

★★★★

 大正時代、26歳の若さで天皇の料理番となった伝説のコック秋山徳蔵の物語。堺正章が主演した35年前のオリジナル版を夢中で見た世代なので、一皿のカツレツで人生が変わる名場面を再び見られて胸がいっぱい。大物なのか、ただのバカなのか。破天荒この上ない16歳の徳蔵を佐藤健があっけらかんと演じていて「わしは大日本帝国一のコックになるんです!」の覚醒にわくわく。走る、転ぶ、飛ぶを生き生きと表現できる体のキレも疾走感を盛り上げる。昭和顔と働き者ぶりがかわいらしい妻、黒木華や、長男の人徳が素晴らしい鈴木亮平兄やんなど、こういう人あってこその出世街道に親近感がわく。朝ドラ「マッサン」もそうだが、激動の時代に、ひとつの道をダイナミックに極めた人の実話は夢があってドラマチック。開局60周年記念作を過去の名作で作るTBSの現状は寂しくもあるけれど、息苦しい今の時代に、リメークする意味はきちんとあると思う。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)