フジテレビ改編説明会で、バラエティーの新番組5本のうち、4本が仮タイトルのまま発表された。大量宣伝が見込める晴れの日に、視聴者にタイトルをアピールしないのんびり感に面食らった。他局ではあり得ないことで、この手のルーズな習慣も、低迷の一端に思えてならない。

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 4月新番組として発表されたバラエティーは5本。そのうち「あの人はなぜホメられるのか?TV(仮)」「イケてる男と聞きたい女(仮)」「超ハマる!爆笑キャラパレード(仮)」「かたらふ(仮)」の4本が仮タイトルだった。改編説明会は手塩にかけたタイムテーブルの最終版をお披露目する晴れの場なので、「仮」だらけの発表資料はかなりの違和感。視聴者に不親切な謎の展開で、終了後、取材エリアも「もうすぐ4月なのに大丈夫か」とざわついた。

 今回、他局で仮タイトルのまま発表された新番組は、テレビ朝日深夜の「橋下×羽鳥の新番組(仮)」のみ。それ以外は、全局どの番組も本タイトルをお披露目し、タイトルの意味や狙いまでアピールしていた。というか、正式発表なのだからそれが普通で、「仮」のまま発表するのはフジだけだ。昨年を振り返っても、バラエティー3本が仮タイトルで発表され、うち2本が終了の憂き目に遭った。

 タイトルは番組の骨格やカラーそのものだ。正式に決まったから正式発表するはずの場で「仮」のままということは、番組の世界観がまだふわふわしていることを意味してしまう。宣伝の初動が遅れ、視聴者はタイトルを知らないまま4月を迎える。改編説明会が、視聴者の方を向いていないのだ。本番のタイトルが仮題と大きく違っていれば、今回の宣伝の意味もない。

 そもそも説明会の日程自体、フジは常に遅め。今回もトップバッターは日本テレビで、2月22日に終えている。テレ朝、テレ東、TBSも3月第1週に終えた。ベテラン記者は「自信のなさの表れ。他局の様子を見てからという気持ちが先に立ってしまう。タイトルをいつまでも『仮』のままにしておくのも同じ」。フジテレビといえば、他局に先駆ける企画力と行動力でテレビのトレンドをいくつも作り、「カノッサの屈辱」とか「トリビアの泉」とか、名タイトルをいくつも放送史に残した元リーディングカンパニー。自信あふれる時代を知るだけに、いろいろさみしい。

 最速の日テレは、関連資料配ったりタイトル入りのポスター張ったり現場インタビューをさせたり。次のステップでぐいぐいやっていて、外野から見るとよほど危機感と活気が漂う。他局と違い、フジの説明会は唯一ホテルの宴会場でパーティーつきで盛大に行われる。イベントの派手さと、「仮」ばかりの資料のギャップに戸惑う。

 今回のフジの改編率は、全日(午前6時~深夜0時)19・9%、ゴールデン(午後7時~同10時)36・0%、プライム(午後7時~同11時)37・8%。伝統の「ごきげんよう」と昼ドラ枠を終了させ、早朝の「めざましアクア」から夕方の「みんなのニュース」まで平日15時間の生放送にチャレンジすることでも話題だ。宮道治朗編成部長は、始まりの合図である「PLAY!」をスローガンに掲げ、「窮屈になっている時代を、ポジティブな方向に変えていく」と意気込んでいる。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)