フジテレビ系ニュース情報番組「みんなのニュース」(月~金曜午後3時50分~同7時)のワンコーナー「ネットNAVI」が面白い。10月の番組リニューアルで終了することになったが、ネットの話題に特化したコンテンツは、グルメ・激安情報などの横並びになりかちな夕方ニュースの中でオリジナリティーを発揮していた。ナビゲーターを務めるジャーナリスト津田大介氏(42)が、「マスコミとネットのハイブリッド」ならではの視点を語ってくれた。

**********

 -「アフリカの鳥がなぜか千葉で目撃談」などのおもしろネタから、フランスのテロ事件後の「ネットに出回っている画像の悲しい現実」のような社会派ネタまで、ネット周辺の“今”を紹介する内容が面白いです。

 津田 おかげさまでコーナーの視聴率もいいようで。あと、ギョーカイ視聴率もいいんですよね。「そんなネタ知らなかった」と声をかけていただくことが多くてうれしいです。

-コーナーの放送が夜6時35分ごろに定着して約1年になります。クオリティーを維持するのは大変だと思いますが、毎日ネタはどうやって探しているのですか。

 津田 10人強のスタッフが朝9時くらいに出社して、まずひたすらネットのニュースを探して共有する作業。午前中には「これでいけるか」とネタを決め、VTR作りに入ります。必要なら取材に行ったり、スカイプで当事者にインタビューしたり。僕もネタ探しには協力していますが、コーナーが続いているのは優秀なスタッフたちのおかげです。

 -世界で110万回再生された近未来CG動画「2045」を作った中3男子をテレビで初めて取材したり、スタッフの携帯電話に送られてきた怪しい警告メールの正体を追跡してその日のうちに放送したり。モニターの前だけではないフットワークが画面ににじみます。

 津田 ネットのニュースをそのままなぞるのではなく、ちゃんと当事者にインタビューを当てるような、裏付けと付加価値を大事にしています。芸能人がテレビで言ったことがそのまま芸能ニュースになったり、今のネットニュースは早い者勝ちみたいになってますよね。ネットNAVIはそこにくさびを刺している。10分のコーナーですが、ネットの情報を確認して独自に味付けするジャーナリズムを地上波のニュース番組できちんとやっているのがこのコーナー。そのくらいは、ネットと旧来の報道が融合してきたのかなと。

 -どの局も、ニュースのラインアップや、グルメ情報などの特集はほぼ横並び。ネットという別の切り口で見せてくれるトピックにはなるほど感が漂いますし、テレビでしか届かない層には特に見ごたえがあると思います。

 津田 最初のころは報道局との連動でも浮いていて、なかなか協力も得られないみたいな時期もあったんですけど(笑い)。スタッフはいい反骨心というか、ちゃんと自分たちのコーナーで視聴率をとって、よそのニュース番組ではできないことをやろうという気概で頑張ってくれています。

 -既存メディアの中でネットが何かやろうという時、やっかいなのは外より中だったりするものですが、身内の壁を感じることはないですか。

 津田 政治部が介入してくると少しウザいですね。ネタによっては「どういう話をするつもりですか」と横から内容に注文が来るので。芸能ネタもそうですが、取り上げ方をめぐって議論になることはあります。ネットNAVIのスタッフは「津田さんのコーナーだから自由に言ってください」と尊重はしてくれるので、両方の顔が立つギリギリのコメントを考えます。生放送なので言ったモン勝ちみたいになった時は、だいたい伊藤(利尋)アナが固まって、きれいに流します(笑い)。そういうライブ感もネットNAVIの面白さかなと。

 -津田さんはインターネット界の第一人者というイメージだったので、地上波の画面に毎日登場しているのはいまだに不思議な感覚というか。

 津田 本人が一番不思議ですけどね(笑い)。僕自身は元々テレビっ子で、高校のころ、フジテレビの深夜番組が最先端で面白くて、夢中で見ていました。新聞部でもあったから、マスコミへの興味のスタートは新聞とテレビなんです。そんな土台があるところに、大学生だった95年頃にインターネット革命があって「これは世の中を変える」と。同じタイミングの同世代すごいですよ。堀江貴文さんは1個上、サイバーエージェントの藤田晋さんは同い年です。

 -新旧どちらのメディアにも等距離なベースがある世代なのですね。

 津田 そうですね。ネットが好きな人は「これだから旧メディアは」と言うし、マスコミの人はネット嫌いだし(笑い)。でも僕は高校と大学でどっちも見てきて、マスとネットのハイブリッドなんですね。最初の仕事は雑誌でしたし。4マス(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)とネットの仕事を全部等距離でやっている人はあまりいないので、旧メディアと新メディアをつなげるネットNAVIをやっていることに意味があるのかなと思います。

◆津田大介(つだ・だいすけ) 1973年、東京都生まれ。早大社会科学部卒。大阪経済大学客員教授、京都造形芸術大学客員教授。メジャーナリスト、メディア・アクティビストとして、テレビ、ラジオ、雑誌連載、ソーシャルメディア、メルマガ配信などあらゆる分野で活動中。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)