1月期の冬ドラマが出そろった。手堅く視聴率が見込める警察ものが5本も乱立するピリッとしないラインアップで、評価5の満点は1作のみ。全体的に面白さも中くらいといった印象だ。「勝手にドラマ評」第17弾。ドラマおたくの立場から、今回も勝手な好みであれこれ言ってみた(シリーズものは除く)。

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【月曜】

◆隠蔽捜査(TBS、午後8時) 杉本哲太/古田新太

【評価3】

 組織防衛と出世争いに明け暮れ、警察官の正義など二の次。そんな「キャリア」と呼ばれる警察庁エリート組の実態に、キャリアの一員として正攻法で立ち向かうまじめ人間、竜崎(杉本哲太)の戦いを描く。銀行の内幕を描いた「半沢直樹」の警察版みたいな作りだが、金融庁から町工場のおやじまで、さまざまな外部との駆け引きがダイナミズムを生んだ半沢直樹と違い、こちらは警察というコップの中だけのお話。映像で舞台が動かないのはちょっとしんどい。現実主義な古田新太と「隠蔽しろというのか」と目をむく杉本哲太。毎週お約束のやりとりがネタみたいでツボ。所轄の署長に降格された3話から、物語がグッと動いた。


◆失恋ショコラティエ(フジテレビ、午後9時) 松本潤/石原さとみ

【評価2】

 チョコレート王子のめくるめく片思い。オレ様なSキャラが得意な松潤がドMな恋愛に体当たり。妄想と回想と独り言が錯綜しすぎて、話の骨格がフワフワした印象。時系列や夢の世界を自在に書き分けられるマンガだから成立する世界観であって、映像にするなら別のアプローチで主人公に魅力を。松潤も30歳。今も王子キャラの初期設定のまま仕事が固定化されている胸の内を思うとざわざわする。大野君が「鍵のかかった部屋」、櫻井君が「家族ゲーム」と次々と新しい横顔を示す中、今も「花より男子」(05年)の道明寺超えがならない感じ。骨のある人だと思うので、ファン向けの内野安打より、三振でもいいからもっとバットを長く持ってホームランを狙ってみては。


【火曜】

◆福家警部補の挨拶(フジテレビ、午後9時) 檀れい/稲垣吾郎

【評価3】

 コロンボや古畑任三郎に代表される、犯人が最初に分かっている倒叙ミステリー。第1話は、放送直前にあちこちを削ったのかと思うくらい謎解きが破綻した感じだったが、2話の富田靖子でちょっと持ち直した。全体的に、福家警部補が突きつける“決定的証拠”が弱すぎ。袖の血とか、ブローチを間違えたとか「たまたまです」で言い逃れできるものばかりで、完全犯罪が崩壊するカタルシスが薄いのだ。トリックの中身より、かばんの中がぐちゃぐちゃで警察手帳が出ないとか髪の毛ボサボサとか、見た目のキャラ立ち優先で檀れいの持ち味が生かされない。軽~く見られるフォーマットは好きなので、30分2本立てなら積極的に見たい。


【水曜】

◆明日、ママがいない(日本テレビ、午後10時) 芦田愛菜/三上博史

【評価3】

 ジャンルはコメディーをまぶしたヒューマンドラマ。パッケージが陰惨なので不謹慎のやり玉に挙がるが、むしろ「コガモの家」には悪人が1人もいない。魔王こと三上博史の素直じゃない優しさや、能面みたいな児童相談所職員の秘めた愛情が、拍子抜けするほど分かりやすく描かれている。要は「自立して強く生きろ」と言いたい魔王と、誰よりも大人な愛菜ちゃんの奇妙な二人三脚。それだけに、特定の病院を揶揄(やゆ)する「ポスト」なんてあだ名をつけた制作の無神経とヌケ作ぶりが悔やまれる。「お前たちはペットショップの犬と同じ」という犬扱いのセリフが問題視されてもいるが、私が問題視したいのはむしろそのセリフの陳腐さ。「同情するなら金をくれ」(家なき子)みたいな渾身のオリジナリティーで抗議殺到なら上等だが、「犬」とかあまりに型通り。雑さが透けて見えるから当事者の反発を招くのだ。こんな話題ばかりで、胸を揺さぶる子役陣の熱演がすっかりスルーされてしまったのが悲しすぎる。スポンサー全社がCM撤退。もう、児童養護施設を扱ったドラマはどこも作らないだろう。愛菜ちゃんたちの役者魂を、最後まで見届けます。


◆僕のいた時間(フジテレビ、午後10時) 三浦春馬/多部未華子

【評価5】

 苦手な難病ものだが、今どき珍しくきちんと書けたラブストーリーで驚く。就活全滅というデリケートな時期に知り合った三浦春馬と多部未華子が、悩んだりけんかしながらも引かれ合っていく過程が丁寧に描かれ、説明不要の切なさにハートがあったまる。チャラい仮面を脱げば、まじめで一生懸命。普通の人を魅力的に見せる演技派2人にイヤミがなく、実際お似合いなので画面が安定する。これから三浦君が直面する苦悩や修羅場を思えば胸キュンだけじゃ済まないが、今後脇役陣とのかかわりもドラマを生んでいきそう。できれば病気じゃないバージョンで見たかったが、こうなったら、練られた脚本を信じて、この2人の1本道をちゃんと見届けたい。


【木曜】

◆Dr.DMAT(TBS、午後9時) 大倉忠義/加藤あい

【評価3】

 災害派遣医療チーム、DMAT(ディーマット)。緊迫感あふれる人間ドラマを期待したが、テンポが悪くてしょぼん。自らのミスで妹を植物状態にした過去を持ち、常に不機嫌そうにめそめそ、うじうじ。アムロか。碇シンジか。DMAT辞めます→仕方なく現場へ→打ちひしがれて泣く→辞めます、の繰り返し。青臭いというより、更年期っぽい。葛藤だけで成長しない人を見ているのはしんどい。同じ回想シーンを連発したり、ひとつ覚えみたいなブラックアウトを連発したりと、流れやスピード感をズタズタにする演出が随所に。大倉君が心を込めて演じているのが分かるだけに、いろいろと残念。


◆緊急取調室(テレビ朝日、午後9時) 天海祐希/田中哲司

【評価3】

 容疑者の自白を引き出す専門チーム「緊急事案対応取調班(キントリ)」に配属された女性取調官の活躍を描く。もっと心理学や専門分野のチームワークを駆使した、次世代のアカデミックな取り調べを見せてくれるのかと思ったら「お母さん、泣いてるよ」というただの泣き落とし。見ごたえは毎回の犯人役次第。3話の安達祐実はさすがだった。捜査をしないので動きの迫力がない分、もっと安楽椅子探偵の切れ味でわくわく感を。じじい連中が天海に「おい、ばばあ」とニヤニヤするたびにチャンネルを変える。「戦力外捜査官」も「福家警部補の挨拶」もこの作品も、群れる男集団が女1人を仲間外れにする構図。せめてドラマくらい仲間に入れて下さい…。


【金曜】

◆天誅~闇の仕置人~(フジテレビ、午後7時57分) 小野ゆり子/泉ピン子

【評価3】

 警察ものが5本という凡庸な冬ドラマ界で、なんじゃこりゃな面白さに腹を抱える。戦国時代からタイムスリップした女忍者が、泉ピン子の家に居候して仕事人稼業。「必殺仕事人」と「渡る世間は鬼ばかり」。やたら影を引きずる忍者を、元気なおばさんがアゴで使う。「契約!」「承知!」。くるくる回る戦闘アクションと、ドラゴンアッシュのBGMがかっこいい。1話のDV夫が忍者と互角に渡り合っていて爆笑。荒唐無稽な設定をねじ伏せる泉ピン子パワー。天誅が、反省させるだけなのが極めて残念。せめて「ハングマン」みたいなバカバカしい社会的制裁を加えてほしい。カタルシスの腰を折られると、観る気がしぼんでしまう。


◆夜のせんせい(TBS、午後10時) 観月ありさ、ほか

【評価4】

 スナックのママから定時制高校の教師に転身したケバいヒロインの教師道。説教臭くなりがちな定時制ものだが、この作品の観月は生徒たちとの距離感が絶妙。開けっぴろげだが下品ではなく、土足でズカズカくるが馴れ合いの一線は越えない。「あまちゃん」のキョンキョンみたいな気っ風のいい愛情で、笑いあり涙ありのすがすがしい結末に。どんな事情があれ、自分で稼いで食べている人たちへの讃歌が伝わってくるシナリオ。こんな先生に出会いたかったと心底思う。驚くべきは出演者の豪華さで、蓮佛美沙子、高橋一世、山本耕史、田中圭、堀内敬子など、NHK土曜ドラマみたいな顔触れで生徒役が盤石。それぞれ今後どう火を噴くのか楽しみ。


◆私の嫌いな探偵(テレビ朝日、午後11時15分) 剛力彩芽/玉木宏

【評価2】

 毎クール必ずチャンスが回ってくる最強女優剛力彩芽ちゃんの最新作。玉木宏とのW主演。金で動くイケメン探偵と、事務所の大家さんの迷コンビ。「ミステリー大好きっ子歴20年ですっ」。ちょっと無理…。玉木のずっこけコメディーは意外といけるけれど、全体のテイストを剛力ちゃんに寄せすぎているので、合わせるのにしんどそう。テレ朝にとっては「トリック」の夢よもう1度、なのかもしれないが、仲間由紀恵&阿部寛級のコンビを狙うのは虫がよすぎるような。工夫とオリジナル性で傑作を輩出してきたこの枠のファンとしてちょっと残念。1話の結末が「続く」で完全に心が折れてしまい、脱落。


【土曜】

◆戦力外捜査官(日本テレビ、午後9時) 武井咲/TAKAHIRO

【評価3】

 ライトノベル風の原作を、鴻上尚史が連ドラ初脚本。エリートなお嬢さん警部と、お守り役のイケメン刑事の珍コンビ。「戦力外」として捜査から外されるも、あの手この手で難事件を解決。都バスで現場に向かうガッツに笑う。EXILEのTAKAHIROがドラマ初挑戦。うまくはないけれど、全体からにじみ出るまっすぐな人の良さがこの役に合っていて好感が持てる。セリフ以外の、驚く表情や返事などのリアクションが神。これとフリーダムな老師匠、関根勤でいくらでも笑える。コメディーなのに上司のいびりだけガチだったり、急にシリアスになったりお子さま向けすぎたり、ピッチが安定しないけれど、サクッと楽しむならおすすめ。


【日曜】

◆S-最後の警官-(TBS、午後9時) 向井理/綾野剛

【評価2】

 警視庁のNPS(特殊急襲捜査班)のエースの活躍。もっとダークでハードな見ごたえかと思ったら、向井理君が「国民守るぜ、ヤッホー!」みたいな似合わないノリ。「絶対に犯人を殺さない」のが信条で、「生死を問わず制圧」の特殊部隊SATの銃に立ちふさがって毎週「どけ」「どきません」の展開。失敗ばかりな上、人質よりも凶悪犯を守ろうとする原理主義には共感できない。「誰も死なせない」「罪をつぐなうんだ」。きれいごとを言う人を軸にすると思考が一本調子になるので、起伏のない展開に。個人的には、新設部隊を率いる香椎隊長(大森南朋)のチームものとして見たかった。主題歌はまたまたミーシャ。日曜劇場は「JIN」の感動路線じゃなきゃいけないの? この主題歌が似合わないくらい男くさいドラマを希望。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)