女優市原悦子(79)が、映画「あん」(河瀬直美監督、6月公開)で主演の樹木希林(72)と初共演することが24日、分かった。樹木はハンセン病を患った粒あん作りがうまい女性を演じ、市原もハンセン病患者を演じる。

 市原は1957年に俳優座、樹木は61年に文学座で女優デビューした。樹木が60年代からテレビドラマに進出した一方で、舞台を軸に活動し続けた。歩みも違えば、私生活でも親交はなかった。そんな状況での突然の共演オファー。市原は12年にS状結腸腫瘍で映画「東京家族」を降板しており、映画出演は06年「バルトの楽園」から離れていたが、「一緒にお仕事したい」という樹木の願いを受け、出演を決意した。

 劇中で描かれている「樹木葬」も、心を動かしたようだ。昨年4月に夫の舞台演出家・塩見哲さん(享年80)を肺がんで亡くした際、墓石の代わりに植樹して弔う樹木葬を営んだ。その後、出演交渉に訪れた河瀬監督は「樹木さんの直感を信じ、お会いし、だんな様を亡くされた直後で樹木葬にされたことを聞き、ご縁だと思った」と話す。

 撮影を終えると、市原は「日本の美味である、あんを手作りすること、手を取り合い人が人を救うこと…全ていい映画」と喜んだ。樹木との初共演についても「楽しかった。希林さんは、年を経たこと、お体の具合も万全ではないことが(芝居を)魅力的にしているのかな」と笑顔で振り返っていた。

 ◆「あん」 刑務所暮らしの末、どら焼き屋「どら春」に雇われた千太郎(永瀬正敏)のもとに、求人を見た徳江(樹木)が現れる。徳江が千太郎を押し切って作った粒あんがおいしく「どら春」は人気店に。ところが徳江がハンセン病を患ったことが話題となり、客足は遠のいた。状況を察し、店を去った徳江を捜す千太郎が訪れたハンセン病療養所の喫茶店に徳江の親友、佳子(市原)がいた。