歌手郷ひろみ(59)が、21年ぶりに連続ドラマにレギュラー出演することが14日、分かった。佐藤健(26)主演のTBS系連続ドラマ「天皇の料理番」(26日スタート、日曜午後9時)で主人公の人生を変えるキーパーソンを演じる。今年還暦を迎えるが、チャレンジ精神はますます盛んだ。

 郷が久々に演技に挑戦した。収録は今月初旬、都内で行われた。演じたのは、明治時代の初代駐フランス日本大使の栗野慎一郎。不平等条約改正にも尽力した実在の人物だ。珍しい七三分けの髪形に、「人生初なんですよ」と役作りのため、1カ月をかけて口ひげまで伸ばした。さらに約1カ月間、特訓したフランス語を流ちょうに話した。

 料理修業でパリに来た佐藤演じる主人公の篤蔵を支援し、天皇の料理番になるように促す。ドラマの展開に欠かせない重要な役柄だ。長い米国暮らしで英語は得意だが「フランス語はまったくの初体験。演技も久々で、僕にとって世界記録を狙うほどハードルが高かった」と冗談交じりに感じていた重圧を振り返った。

 70年代後半のアイドル時代の異色作「ムー」から91年「刑事貴族」まで、かつては数々のドラマ主演も経験してきたが、40代からは歌手ひと筋に絞っていた。連続ドラマはNHKドラマ新銀河「企業病棟」以来21年ぶり。演技も96年のTBS単発ドラマ「坊っちゃんちゃん」以来19年ぶりだ。

 「ライブでも1曲ごとに演じている部分があったから、それほど違いはなかった」と違和感はそれほどなかったようだが、「セリフを覚える作業や、僕らの時代と違う撮影手順に、撮影初日の後は足が棒になっていた。力の出し抜きのさじ加減が分からないから疲れたんですね」と気付かぬうちに緊張は感じていた。

 歌手として、来月20日に100枚目のシングル「100の願い」を発表する。10月に還暦を迎える記念イヤーだが、「本当にいいチャンスをいただき、忘れかけていたチャレンジ精神を見つけることができた」と刺激を受けた様子。「このビッグチャンスをきっかけに、今までと違う世界を広げていきたい」と俳優業への強い意欲も再び芽生えてきたようだ。【瀬津真也】