原田真人監督(66)が10日、都内の日本外国特派員教会で、第28回東京国際映画祭(22日開幕)で開催される特集上映企画「原田真人の世界」について会見を開いた。「原田真人の世界」は、東京国際映画祭に今年から新設された、今の日本映画を発信する「ジャパンナウ」の一環として企画された。

 原田監督にとって、東京国際映画祭で作品を上映するのは、コンペティション部門に出品された94年「ペインテッド・デザート」以来だという。同監督は「東京国際映画祭で自分の作品をやるのは、20数年ぶり。わが国の映画祭に参加できる…とても興奮しています。世界の観客と劇場で出会えるのを願っております」とあいさつした。

 この日は東京国際映画祭の椎名保ディレクター・ジェネラル、「ジャパンナウ」のプログラミング・アドバイザーを務める安藤紘平氏、原田監督の「駆込み女と駆出し男」(15年)、「わが母の記」(12年)に出演した樹木希林(72)も登壇した。樹木は「黒沢明監督、小津安二郎監督、岡本喜八監督らの映画のシーンを、実にうれしそうに満面の笑みでずっと語っている。その喜びみたいなものが、映画作りに反映されているのが魅力。乗り越えようと思って、いろいろ頑張る…時には失敗することもあるけれど、やっぱり腕がある。一俳優が、監督のことを言ってはいけないんですけど…やはり、うまい」と原田監督を絶賛した。

 安藤氏も「『ジャパンナウ』で11本の(日本映画を)集めた上に、その中ですばらしく、積極的に海外に紹介したいクリエイターが原田監督。『駆込み女と駆出し男』は、単なる人情ものではない。名人の語る落語のような深み、愛、その裏に悲しみがある文学的作品。こういう映画を見て、日本に生まれて良かったと思うし、今年の3本に入る1本です」と、原田監督をたたえた。

 今回、「原田真人の世界」で上映されるのは、「KAMIKAZE TAXI」(95年)、「クライマーズ・ハイ」(05年)、「わが母の記」、「駆込み女と駆出し男」、そして最新作「日本のいちばん長い日」の5本。原田監督は「5作品とも、カンヌ映画祭にNGを食らったんで」と、世界3大映画祭の1つ、フランス・カンヌ映画祭に出品できなかったことを明かした。それを聞いた安藤氏が、「今回(東京国際映画祭)はカンヌに勝ったと思う。カンヌは5作品をリジェクト(却下)しているから」と突っ込むと、会場に詰め掛けた海外の取材陣から拍手が起きた。

 質疑応答の中で、「わが母の記」(12年)「駆込み女と駆出し男」(15年)でタッグを組んだ原田監督と樹木に対し「次の企画は?」と質問が出た。樹木は「何もありません」とかわしたが、同監督は「まさか樹木さんがやるとは誰も思ってない、歴史上の重要人物の役をやってもらいたい」と、時代劇映画の新企画があることを自ら暴露した。