昨年1月に亡くなった歌手やしきたかじんさん(享年64)の最後の弟子で元マネジャーのK氏(49)が28日、作家百田尚樹氏のノンフィクション本「殉愛」で名誉を傷つけられたとして、百田氏と出版の幻冬舎を相手に1100万円の損害賠償を求め、東京地裁へ提訴した。

 この日、大阪地裁では、たかじんさんの妻、家鋪さくらさんが、たかじんさんの元弟子、打越元久氏の発言で名誉を傷つけられたとして1000万円の損害賠償を求めた裁判の判決があり、打越氏は300万円の支払いを命じられた。

 K氏にとって打越氏は兄弟子にあたり“あだ討ち提訴”の形となった。

 K氏はもともと、たかじんさんの弟子で26年のつきあいだった。02年春からはマネジャーを務め、たかじんさんの遺言書作成にも立ち会っている。

 「(殉愛の中で記述は)うそだらけ。でも、それ以上に、暴れん坊(のイメージ)でいたうちの師匠(たかじんさん)のことをあんな風に…。師匠を汚されたという思いが強い」とK氏は提訴への理由、経緯を説明した。

 K氏によると、たかじんさんのがんが発覚した当初、ドキュメンタリー映像のため「ビデオで追いかけましょうか」との依頼があったが、たかじんさんは「絶対にいや」と拒否。弱った姿は見せたくないとの姿勢を貫いたという。ところが「殉愛」の中では、病で気落ちしているような記述もあり、K氏にとってはそれが「師匠を汚された」との思いになったようだ。

 今回の提訴を受け、幻冬舎は「訴状がまだ届いていないので、コメントは差し控えさせていただきます」とした。