第28回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が7日、決定した。

 長沢まさみ(28)が「海街diary」で助演女優賞を初受賞した。奔放で生命力に満ちた4姉妹の次女を、すがすがしく演じた。長女を演じた綾瀬はるか(30)の主演女優賞、末っ子役の広瀬すず(17)の新人賞受賞も、家族のことのように喜んだ。

 「すごくうれしいです」と笑みを見せ、続いた言葉は「家族」の受賞への喜びだった。「家族の物語だったので、身内たちが認められたのはうれしい。不思議ですよね。自分たちも本当の家族のようになっていってしまうって、お芝居の力はすごいなと思います」。

 04年に「世界の中心で、愛をさけぶ」で新人賞を獲得した授賞式で「映画を大切にしていきたい」とスピーチして泣いた。キャリアを重ねても、思いに変化はない。「全然変わらないんです。子供のころから、監督やスタッフさん、共演者の方々に『映画を大事にしてくれ。作品づくりはすごいことなんだよ』と教えてもらってきましたから。言葉はその時々で変わっても、根本は変わってないです」。

 是枝裕和監督(53)も、映画への思いを伝えてくれた。「私たちはどうしても演じ終わったら終わり、というところがあるんです。でも、映画が世の中に与える影響は自分たちが思ってるより大きい。人の心や世の中を動かしたり、時代の象徴になったり。是枝監督は映画の影響力を、声を掛けて伝え続けている。役者には、お芝居の部分だけじゃないんだよって」。

 演じる上で「こうじゃなきゃだめ」をつくらない。「いろんな映画があるし、対象の客層も違う。自分の枠にとらわれたら終わりかなって」。理想像もある。「イメージのない女優になりたい。その時々で変わりたいですね」。イメージの変化も望んでいる。「アクションやりたいんです。いつもドジな役が多いから、もうちょっと運動神経がいい役やりたいです」。

 思いは変わらないまま、スクリーンで自由に変化し続ける。【小林千穂】

 ◆長沢(ながさわ)まさみ 1987年(昭62)6月3日、静岡県生まれ。12歳だった00年「第5回東宝シンデレラ」で3万5153人の中から当時最年少のグランプリ。映画「クロスファイア」でデビュー、03年「ロボコン」で初主演。是枝監督作品は11年「奇跡」以来2度目。来年のNHK大河ドラマ「真田丸」でヒロインを演じる。168センチ。血液型A。

 ◆海街diary 鎌倉に住む香田幸(綾瀬はるか)佳乃(長沢まさみ)千佳(夏帆)3姉妹のもとに、15年前に家族を捨てた父の訃報が届く。葬儀が行われた山形で、幸は初対面した異母妹すず(広瀬すず)を引き取り、同居を始める。4人が穏やかに暮らす中、3姉妹の母(大竹しのぶ)が現れる。是枝裕和監督。

 ◆助演女優賞・選考経過 「『海街-』で綾瀬はるかを長女たらしめたのは長沢まさみ」(寺脇研氏)と、長沢を推す声が圧倒。「10代でデビューして、40代で『この国の空』にめぐり合ったのは大きい」(渡辺武信氏)と工藤夕貴の支持もあったが及ばず。「海街」勢では三女役の夏帆を推す声もあった。